オペラや劇音楽の序曲は雰囲気を盛り上げ、その先への期待感を高めるのにピッタリであり、ワクワクドキドキさせられる。小説でもプロローグが面白くないと本文への興味が薄れるのと同じようなものである。通常は劇中の旋律から聴き所ばかり集めて贅沢に作られているし、単独の序曲の場合でも特徴ある旋律で耳に馴染みやすい。オーケストラの魅力を堪能できるひとつに序曲があると思う。
ウィリアム・ボイス〔ケンブリッジ大学名誉教授就任祝賀序曲〕UCCP-3510
レッパード指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 (9:21)
ワーグナー 歌劇〔タンホイザー〕序曲 UCCD-5030
序曲ショルティ指揮 シカゴ管弦楽団 (14:52)
ロッシーニ 歌劇〔セビリャの理髪師〕序曲 UCCG-3887/8
アバド指揮 ヨーロッパ室内管弦楽団 (7:11)
J. シュトラウス U世 喜歌劇〔こうもり〕序曲
カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (8:39)
ヴェルディ 歌劇〔運命の力〕序曲
シノーボリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 (7:46)
グリンカ 歌劇〔ルスランとリュドミラ〕序曲
プレトニョフ指揮 ロシア・ナショナル管弦楽団 (4:44)
マスカーニ 歌劇〔カヴァレリア・ルスティカーナ〕間奏曲 UCCG-3535/6
カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 (3:30)
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【序曲三行解説】
【ケンブリッジ大学名誉教授就任祝賀序曲】
ウイリアム・ボイスの宮廷音楽監督としての任務のひとつに、王の誕生日と新年の祝典曲を作ることがあった。しかし、ここに収録された曲は1749年7月、ニュー・キャッスル公爵ヘンリー・ペルハムのケンブリッジ゙大学名誉教授就任を祝うために書かれた作品である。
【タンホイザー】
「さまよえるオランダ人」に続いてワグナーが32歳のときに書き上げたオペラで、まだ楽劇という独自の様式を確立する以前の作品である。彼の中期の傑作であり、ワグナー特有の官能的なオーケストレーションもあって、独立した名曲として非常に良く演奏される。
【セビリアの理髪師】
早筆のロッシーニは37歳までに39作のオペラを書いて筆を折り、後半生はわずかな器楽小品や宗教曲のみを手がけていた。1816年にローマで初演されたこの〈セビリアの理髪師〉は、モーツァルトの〈フィガロの結婚〉の前話にあたる。
【こうもり】
ワルツ王J.シュトラウスU世は晩年に喜歌劇を手がけ、この分野でも成功を収めた。1874年初演の〈こうもり〉は〈ジプシー男爵〉と並ぶ代表作である。序曲は劇中の魅力的な旋律を集めた接続曲風の音楽である。
【運命の力】
1862年初演。恋人と駆け落ちをしようとした公爵の娘レオノーラ。父公爵に見咎められ、
銃が暴発し公爵は亡くなる。その後何年にもわたって二人が過酷な運命に翻弄される物語。 オペラのモチーフを散りばめた序曲は悲劇を予感させるような劇的な音楽になっている。
【ルスランとリュドミラ】
舞台は古代ロシア。悪魔に拉致されたリュドミラ姫を勇ましい若者ルスランが救出する。
序曲は冒険物語にふさわしい活気に満ちたもので、冒頭は血沸き肉踊る全合奏、溌溂とした第一主題が全力で駆け抜ける。テンポが早くて聴く方は少し疲れる(?)曲です。
以 上