Ishizeki

録音バカのひとりよがり

AAFC例会資料
2008/11/22
担当 : 石関 吉彦

  
  私は録音を始めて20年になります。始めた動機は小型スピーカー製造メーカーで試作品の視聴ソースとして必要だと感じたからです。 柏の知人の新日本フィルのコントラバス奏者からチャリティコンサート等の録音を依頼されるようになり、また、そのコントラバス氏の紹介で、第一級のクラシックアマイストのライブ録音に推薦してもらったりして駆け出しの録音小僧にとっては全く身分不相の幸運に恵まれたのです。

  器材は当時、欧米のスタジオでもつかわれていたという高音質のソニーのPCM-Flというデジタルテープレコーダーを格安で入手できたのと、パイオニアがアマチュア用に売り出した安価だが、飛び抜けて良好な自然さとダイナミックレンジの大きなすぐれもののマイクがディスコン直前であることを知り、あわてて購入し、間に合うという幸運が重なりました。

  何しろこのCM-7という単一指向のダイヤプラムが直径20ミリ、その厚みはわずか2.5ミクロンの薄さで軽量、これが応答性や高分解能に大きく寄与しているらしく、マイクポイントと演奏者の間に一定の距離を保たなければならない、ワンポイントオフマイク収録に限れば、プロ用のスタジオ名器 マイク顔負けの音質なのです。
当時、オーディオ専門のパイオニアがアマチュア向けになぜ過剰と思われるスペックのマイクを発表したのか分かりませんが、企業イメージとは合わず、さっぱり売れなかったとのことで、発売後2〜3年で、ディスコンになってしまいましたが、私はディスコン後、店の在庫を安く分けてもらい、故障しても、永年使い続けられるよう、6本購入しました。

  優れもののレコーダーとマイクのペア、それにプロのアーティストの良質な演奏に助けられ、管楽五重奏、弦楽クアルテット、ピアノ・ヴァイオリン・デュオ、新日本フィルの弦のメンバー20人によるヴィヴァルディ、 チター・ソロ等のソースを期待以上の良い録音で残すことができました。

これ等のソースは、仕事での試作品の視聴のみならず、わが家の道楽で構築したマルチアンプドライヴのホーンスピーカシステムのバランス取りと音質改善に格好のツールとなったのです。
録音はいつもゲネプロから始めますが、ゲネプロの時、マイクポジションに立って、その昔を記憶しておきます。マイクポジションで聴く音は客席で聴く音とは相当に違うのです。 まず、第一に楽器の音が鮮明、各楽器から発した音は36げの空間に飛び、反射してホーんエコーとなり、それぞれ別の方向から返って、楽器の音にブレンドして非常に豊かな響きです。目の前の演奏なので、躍動感がある等、客席で聴くのとは別の感覚なのです。

  このホールの響きを含む全体の演奏環境をそのままわがシステムにワープさせたいと廉い、記憶の消えぬうちにと、帰宅すると、まず、ゲネプロの方から先げ妥ミックしま丸必然的にマイクポジションで聴いていたのと同じ音量に感じる、大音量での再現となるのです。等身大の再生でのF特性は全くフラットでなくてはなりません。

  一説には、オーディオの再生では、視覚による援助がないので、その分を生とは音のバランスを変えて録る必要があるとも言われていますが、それは、生音よりずっと小さな音量においてであり、 等身大再生のための録音には音像にはエッジをつけることもメリハリをつける必要もありません。
こうしたエフェクターの使用による補正は、かえって不自然となるので、生音と同じバランスが最も良いのです。それには再生システムが大型で広い帯域でリニアリティが求められ、各スペックにおいて高い完成度が必要となります。従って、自ら録った何のエフェクターもかけないダイレクトのワンポイント収録の等身大再生では、わがシステムは欠陥をさらけ出すことになります。 そして、10年以上も改善に悪戦苦闘、今日のシステムになりました。

   レコーダーはPMCベーターテープからDATにかわり.、ごく最近DSD録音が可能なハードデ'イスクレコーダーに変更しました。 数年前より、マイクの劣化が気になるようになり、より高音質を求め、やがては更にダイヤフラムが小さくて軽量のマイクへと変更しようと考え、1/2インチクラスのショップやB&Kの購入を考えたのですが、米国のアースワークス社のダイヤフラム径が、1/4インチのQTC-1のオムニマイクの存在を知り、マイクプリと共に購入し、私の録音は飛躍的に向上したのです。

   音質は私のシステムの再生においては、ショップスやB&Kより更に優れています。手を尽くして充分だと思っていたわが再生システムもまだまだだと思い知らされました。
このマイクのダイナミックレンジと繊細さを充分に再生するには、特にホーンスピーカーシステムでは、高域に行く程空気の非直線歪みが多くなるので、分解能が低下します。そのために中高域の分割を多くして歪みを低させなければ充分ではないと、6〜7wayへのステップアップの準備で、今はシステムをバラバラにして休業の状態のです。

   本日はPCMデッキを持参してCM-7マイクで録った録音と、最新のQTC-1マイクで録った両方のソースを聴いて頂きます。幸いにも、この教室にはタンノイの大型モニタスピーカーがあり、等身大再現ができますので、少しうるさいかもしれませんが、我慢して聴いて頂きたいと思います。


● タイムコヒーレント・マイクの紹介(クリックして下さい)

 

以 上