録音バカが本日はソフト派に
寝返って

ベルカント唱法について独断をかまします

AAFC例会資料

2009/04/25

担当 : 石関 吉彦


  1970年代、アメリカの大脳生理学者のスペーリー博士が、人の左右の2つに分割されて存在する大脳の機能差を世界ではじめて検出し、論文にして発表、ノーベル賞を受賞しました。
それは、左の大脳は言語や計算を司る意識的な活動を担当、右の大脳は自然の音を理解したり、芸術や感性等、情感を司る活動をするという住み分けで各々異なった機能の分担を行い、一つの脳として働いているというのです。
  ところが、医科歯科大学の角田忠信という教授が専門の失語症の治療において、日本人患者の左右大脳の機能差データがスペーリー博士が発表したデータとは一致しないことに気付き、 改めて世界各国の健康な人を調査したところ、何と、世界で唯一、日本人の左右の大脳の機能の一部に世界の人々とは異なっているところがあることを発見したのです。
  「日本人は自然の音を言語の脳である左の大脳で取り込んでいる」とのフレーズでマスコミに紹介されましたが、世界に稀で特異な日本文化との相関については余り触れられることはなく、このブームは長くは続きませんでした。         以下 中略

  声楽は楽器とは異なり、そのほとんどが持続音である母音で構成されています。当然、日本人の歌手達は本来右脳で取り込むべき音楽であっても声楽は左の言語脳で取り込みます。
すなわち、自分が発した歌声を左脳で取り込み、フィードバックして歌として整えます。
本来は音楽なのに、右脳では処理せず、当然言語脳であり、また、意識脳である左脳で処理することになるのですから、話を聞く時のように左脳に意識の集中が起こり、母音を音楽脳である右脳で処理する非日本人の歌手ような弛緩集中(リラックスしているのに集中できる)の状態にならず、緊張を強いられ、脳はベーダ一波に支配される状態です。これでは、自律神経が乱れ、副交感神経が働かず、興奮状態で気道を開けることも忘れ、ついつい喉でガナる発声になってしまうのです。       以下 中略

  私の知人で、日本の音楽大学を卒業して、イタリアに留学したO氏がいます。彼は日本で学んだ実力を試そうとマリオ・デ・モナコが主催する声楽コンクールに出場したが、あえなく落選、しかし、声の良さと表現力が認められ、モナコの弟子となり、数年間本場の声楽をたたきこまれた。後に実力が認められスカラ座と契約するまでになった。その後あの、有名なテナー歌手、フランコ・コレッリが開設した音楽学校のマスタークラスに講師として迎えられ、主に東洋からの留学生を指導したという。? そのとき時の体験を私に語った。
  東洋からの留学生で、本場のベルカントの発声の習得のうまさ、速さにおいて、1位は中国人、2位は韓国人、日本人はドンヶツだったというのです。O氏も日本の大学で学んだ発声は全く役に立たず、はじめは大変苦労したという。イタリア大学生は経験が無くても全くハンディは無かった。中国人も韓国人も本場の発声にすぐ慣れたという。日本は既に明治時代に西洋音楽を取り入れ、今日では優れた指揮者やバイオリン、ピアノ等の演奏家を多く輩出している音楽大国でもあるのに、西洋音楽を近代になって取り入れた歴史の浅い中国や韓国より、声楽で劣るのは何故だ!‥。
  しかし、それは前述の角田データが示す通り、日本人固有の大脳生理によるものです。
本日はまず、日本人オペラ歌手にみられる発声=気道や喉を弛緩させっつ開放できない、ガナリ調の
発声とは全く対極にある、真のベルカント歌手達の脱力式発声による歌唱をLDソフトでご覧頂きます。
では、日本人には、ベルカント唱法は不可能なのか???
会場と本人の都合がつけば、日本型の大脳生理を克服し、脱力式発声に研讃を積んだ、ソプラノ歌手
金岡淳子さんに来場し、実際に歌って頂き、この弱点から解放されることが実現できることを確認して頂きたいと思います。

 〈スペースの関係より原文より部分的に省略してあることをお断りいたします〉   編者

◆ 本日観て頂くベルカント発声の本場ヨーロッパの歌手達

アーリン・オジェ(アメリカ)
モーツァルト 「大ミサ曲ハ短調」より  主よあわれみたまえ

マリア・カラス(ギリシャ)
プッチーニ  「トスカ」より 歌に生き恋に生き

マリエッラ・デヴィーア(イタリア) 
ドニゼッティ 「ランメルモールのルチア」より 狂乱の場

フランコ・コレッリ (イタリア)
プッチーニ  「トゥーランドット」より 泣くなリュウ

ベニャミーノ・ジーリ (イタリア)
ヘンデル  「セルセ」より   オンブラマイフ

シルビア・マクネアー  (アメリカ)
マーラー  「交響曲第4番」より  第4楽章

以  上