清水さんのご提案で、AAFC例会後の午後の活動の一環として音楽映像の鑑賞会第一弾として「無伴奏シャコンヌ」が上演された。
10名を 超える参加者で関心の高さが伺えた。
私は最近は映画を見に行く機会が少なくなり専らTVで鑑賞する程度になっている。
バイオリニストとして絶頂期の主人公が華やかな公演活動からドロップアウトし、
パリの地下鉄の通路で自分の為にひたすら演奏する。
通行人が立ち止まり、座り込んで聞き惚れる。パリの地下鉄の騒音の中で心の赴くままバッハを演奏する。
名誉を捨て経済的な困難も捨てひたすらにバッハに傾倒する主人公は崇高な禅僧に似ている。
バイオリストの演奏はクレーメルが弾いているが、主人公は素人の俳優とは思えない指使い、運弓で孤高の演奏家を演じている。
地下鉄の乾いた、響きのある音響、行き交う乗客の騒音の中に響くバッハ、音楽とは何かを考えさせられる映画だった。
最近はコンクールに入賞しただけで流行り立てるマスコミ、悪のりする聴衆、自分を失って自滅する演奏家など目に余る現象と現実に一服の清涼剤である。
音楽に対する監督の畏敬と深い理解力がこの映画を作らせたが、残念ながら我が国では絶対に作られない映画だと思う。
地下道で聞き惚れる聴衆、心を寄せる切符売りの女性、瀕死の老人が聴きながら安らかに迎えた死、演奏しながら天国を夢見る主人公など巧みな背景を展開しながらさりげなくバッハを散りばめていく。
監督の第一作というが素晴らしい感性には感心させられる。
久々に心の琴線に触れる素晴らしい映画であった。
以 上