【音源アラカルト】(その3)

   〜孤高の天才 グレン・グールド〜

AAFC例会資料
2010/03/13

担当 : 後藤 榮一



   没後28年、その音楽性で唯一無二の光芒を放ち続けるグレン・グールドの一端をドキュメンタリ
   映像を交え紹介します。

 

1.バッハ:平均率クラヴィア曲集より
                ・第1巻第9番ホ長調BWV854      1964年録音      1:34
                     CBS MASTERWORKS M3K42266

2.ギボンズ:アルマンドまたはイタリア風グラウンド         1968年録音      1:55
                     CBS SONY 28DC 5287

3.バッハ:パルティータ第2番 ハ短調BWV826よりCourante    1960年録音     1:50
                     SONY CLASSICAL 88697-00814-2

4.R.シュトラウス:ピアノ・ソナタロ短調作品5より          1982年録音      6:39
               第2楽章アダージョ・カンタービレ

5.ブラームス:間奏曲イ長調作品118の2               1960年録音      5:45

              以上4.5.「アンド・セレニティ-瞑想するグレン・グールド」より
                     SONY SICC176

6.バーブラ・ストライサンド「クラシカル・バーブラ」より        1976年録音
              ・ドビュッシー:美しい夕暮れ                      2:38
              ・ヴォルフ:語らぬ愛                           2:55
                     CBS/SONY 35D P163

7.ドキュメンタリー「HEREAFTER[時の彼方へ]」より         2005年制作      約18分
                     IDEALE AUDIENCE DVD9DM20(DVD)

8.ドキュメンタリー「THE GLENN GOULD COLLECTION T」より   1992年制作    約8分
              ・Program1「プロローグ」
                     SONY SRLM 990〜5(LD)

9.J.S.バッハ:ゴールドベルク変奏曲BWV988より         1981年録音      約8分
              ・第3変奏
              ・第7変奏
              ・アリア
                     SONY SRGR 743他

 

「グレン・グールド略歴」

  1932年カナダ生まれの天才ピアニスト。10歳でトロント王立音楽院入学。
最優秀でアソシエイト学位を得る。1955年のバッハ:ゴールドベルク変奏曲でそれまでのバッハ演奏の概念を変える。20代は、アメリカ、ソ連、ヨーロッパでも演奏活動を行い、バーンスタイン、セル、クリップス、カラヤン等と共演、名声を築く。1964年31歳でコンサート活動から引退。以降、レコーディングと音楽関連の創作・著作活動に専念。その後の録音アルバムは一作毎に(16世紀エリザベス王朝期作品から20世紀作品迄)新鮮な驚きと話題で世界中に多くのグールド・ファンを生む。1982年、満50歳の誕生日直後にトロントで死去。
没後28年の現在でも、その演奏作品は愛聴され、さらに新たな愛好家を生み出している20世紀が生んだ
稀有の天才である。


1.諸井誠   「異色の天才ピアニスト、グールド”二度目の死”」

グレン・グールドの訃報は衝撃的だった。〜羽田の日航機墜落、ホテル・ニュー
ジャパンでの多数焼死、ベイルートのパレスチナ難民大虐殺など、'82年も衝撃
的な事件が次々に起こったが、このピアニストの死ほど私の心に深く刻み込ま
れたニュースはなかった。〜要するにグールドは高度な知性と稀有な感覚を併
せ具えた、極度に感受性の強い、知的な創造的解釈者なのである。今、私たち
は、現代最高の知性の一人を失ったのだ。
(1982年10月12日毎日新聞夕刊より転載)

2.B.モンサンジョン

グールドは、ピアニストとしてでなく、音楽思想家、作曲家、著述家、社会学者、
学者、コミュニケーションの理論兼預言者、道徳家として今日の音楽界で最も
重要な人物。〜グールドのように控えめでいながら、圧倒的な影響を外の世界
に与えることのできる音楽家はほとんどいない。
(THE GLENN GOULD COLLECTION T[LD/DVD解説より])

3.L.バーンスタイン  

「ここに現れるグレン・グールドの言葉は、彼の弾く音符と同じくらい新鮮でまち
がいなく彼のものだ。この著作集は歓びと刺激にあふれた驚きの連続である。」
(グレン・グールド著作集1[作曲家論集成より])

4.黒田恭一

グールドは、ゴールベルク変奏曲を弾くときピアノを弾くのではなく微妙に自己を
コントロールしつつピアノに化していく。明晰な頭脳を持つグールドが闇雲に没入
する筈もなく極度の集中力をもって音楽を構成する音の論理と力学を解析して
いく。 そして、そのグールドによる解析の解答が詩として顕れる不思議。
(THE GLENN GOULD COLLECTION U [LD/DVD解説より] )

5.吉田秀和   「私はグールドのような人はほかに知らない」

グールドは1982年に50才で死んだけれど、見方によっては、まだ完全に死んだ
わけではない。 〜つまり彼の仕事はまだ意味を失っておらず、彼が生きていた
当時に劣らないほど生きているからである。 〜グールドが素晴らしいのは一見
病的なくらい偏執症的一面性のように見えながら、実はその正反対だった点に
ある。特に、頭でっかちの理屈の勝った人間では全然なかった。彼の生き方、
仕事の仕方は知・情・意の全体に裏付けられた全身全霊的在り方であり、行動
だった。 〜限りなく純粋な音の流れでありながら、グールドには、何を弾いても、
はっきり歌う心の裏づけがあり、それが聴く者の心に呼びかけ心の中から何か
の力を呼び起こす。グールドが何をやり、何をしゃべっても、私はそこに思弁的
抽象的な冷たい男とか、ひとりよがりな偏屈な人間とかいう感じを受けない。そ
れどころか、彼の笑顔、彼の笑いには演奏と同じような独特の魅力がある。
〜私はグールドのような人はほかに知らない。
(THE GLENN GOULD COLLECTION U[LD/DVD解説より])


※  1977年9月5日打ち上げの星間探査宇宙船ヴォイジャー10号(太陽系の先、何百億キロを
  旅し、3万年後の星雲を目指している)には地球上のさまざまな音が収録された金色のディ
  スクが備えられている。その中にはグールドの演奏によるバッハのプレリュードとフーガが
  収められている。

 

以 上

 
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