バッ八「マタイ受難曲」の魅カ

AAFC例会資料
2010/7/18
担当 : 高橋 敏郎 


  
バッハ全作品、というより西洋音楽の最高傑作であるばかりか、今までに人類が生み出した最高の音楽作品の一つといわれる「マタイ受難曲」について その魅力の一端に触れてみましょう。
この作品は、周知の通り 新約聖書全27巻の最初の巻「マタイ伝福音書」の中、その第26章と27章を基にしてベタニアのライ病人シモンの家のエピソードから始まり「最後の晩餐」 以下、ユダの裏切りとイエスの捕縛、 審問、そして十字架上の死までのイエスに関するドラマを音楽化したもの。しかし単なるキリスト教徒を対象にした一宗教作品にとどまるものではなく、イエスの生涯を通して全人類に共通する広大不変な人間愛を追求した言わば “人類の至宝”的音楽作品にまで昇華されているといわれる。
 全2部構成で78曲からなり、夫々がレシタティーヴォ、アリア、合唱もしくはその複合形式により展開され、所要時間は、例えばこのリヒター盤のごとき標準的な演奏でもほぼ3時間半を要する大作である。
初演は最新の研究によれば、1727年の聖金曜日、当時バッ八がカントルの地位にあった独ライプツィッヒの聖トーマス教会の晩課においてと言われる。 バッ八42歳の作で、同教会カントル就任後、4年目のことだった。
 然しこの畢生の名曲も、何故かバッ八の他の傑作群とともに暫し忘れられた存在となっていて再び日の目を見たのは初演からほぼ100年後の1829年、当時20歳のメンデルスゾーンによる蘇演によってだった。この歴史的復活演奏を機にバッ八再評価の気運がドイツを中心にして急速に生まれ、以降順調に真価が認められるようになって現在の汎世界的なバッハ・ブームヘと拡大していったのである。
 今回は時間的制限もありますので、下記部分のみの演奏となりますが、何れ可能であれば全曲を通して聴かれることをお薦めします。

1。 冒頭合唱 (第1曲) 刑場への行進の情景   9’5 0”
2。 第71曲「十字架上のイエス」以下 第78曲の終結合唱まで 2 3’3 2”
  (演奏部分の歌詞を添付。出来れば曲を聴きながらご参照願えれば幸甚です)

音源
カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッ八・コーラス&オーケストラ
エルンスト・ヘフリガー(テナー/福音史家)キート・エンゲン(バス/イエス)
ヘルタ・テッパー(アルト)フィッシャー・デイースカウ(バス) 1958年録音
日グラモフォン UCCG-5108(CD)

     以 上