・本日は、モーツァルトの「ヴァイオリン・ソナタ」から3曲を選びました。
・まず「ハ長調」(K296)は、22歳旅先のマンハイムで作曲した青春の香りと活気にあふれた佳作です。我が国の優れた古楽奏者の演奏で聴きましょう。
・次の「ホ短調」(K304)は、それに続くパリ滞在中の痛切なかなしさの漂う短調の秀作です。深い悲しみが、戯れの中で明るい笑みに変わっていくモーツァルトならではの曲です。
・そして最後の「イ長調」(K526)は、高揚した穏やかさの中で、2つの楽器が対等に競って歌うことに成功した
このジャンル中の傑作です。前曲とこの曲はホルショフスキーとシゲティで聴きます。ホルショフスキーは目出ち過ぎず引き過ぎず、シゲティのヴァイオリンに溶け入るようなピアノを奏でています。まさに「黄金のバランス」と称えられるPとVnの二重奏曲です。
(1)ヴァイオリン・ソナタ ハ長調K296(第24番) 1778.3.11 マンハイムにて作曲
Ⅰ アレグロ・ヴィヴァーチェ 9:08
Ⅱ アンダンテ・ソステヌート 5:06
Ⅲ ロンド(アレグロ) 4:22
小島芳子(fp) 若松夏美 1999年録音 BIS.
(2)ヴァイオリン・ソナタ ホ短調K304(第28番) 1778. マンハイムとパリにて作曲
Ⅰ アレグロ 7:00
Ⅱ テンポ・ディ・メヌエット 5:49
ミエチスラフ・ホルショフスキー(P) ヨゼフ・シゲティ(Vn) 1968年録音 Van.
(3)ヴァイオリン・ソナタ イ長調K526(第42番) 1787.8.24 ウィーンにて作曲
Ⅰ モルト・アレグロ 6:35
Ⅱ アンダンテ 7:22
Ⅲ プレスト 7:02
ミエチスラフ・ホルショフスキー(P) ヨゼフ・シゲティ(Vn) 1968年録音 Van.
<演奏者紹介>
小島芳子(1961~2004)
福岡出身 ピアニスト 桐朋音大卒。オランダ デン・ハーグ王立音楽院在学中に「第2回国際モーツァルト フォルテピアノコンクール」(1986年ブリュージュ)第2位受賞。
ヨーロッパ各地で活発な演奏活動を行った。東京芸大、東海大学講師を務めた。今から9年前惜しまれて病没。
若松夏美
仙台市出身 バロック・ヴァイオリンの名手。桐朋音大卒。オランダ デン・ハーグ王立音楽院に留学。シギスヴァルト・クイケンに師事。18世紀オーケストラ、ラ・プチットバンドのメンバー表でこの名を知った方も多いと思う。現在、バッハ・コレギウム・ジャパン、オーケストラ・リベラ・クラシカのコンサートマスターを務める。桐朋学園大学古楽科、東京芸術大学古楽科非常勤講師。
ミェチスラフ・ホルショフスキー(1892~1993)
ポーランド出身のピアノ奏者。1940年第2次大戦中にアメリカ移住。1942年以降フィラデルフィアのカーティス音楽院で後進の指導に当たった。ここでの門人にリチャード・グード、ピーター・ゼルキンがいる。戦後プラド音楽祭、マルボロ音楽祭に参加。マルボロでマレイ・ペライアを教えた。1987年95歳の時初来日し、ガザルスホールでリサイタルを開いた。99歳まで公開演奏会を行った。
ヨゼフ・シゲティ(1892~1973)
ハンガリー出身 20世紀を代表するヴァイオリニストのひとり。求道的な芸術家との誉れ高い。1951年にアメリカ合衆国の市民権を得たが、60年にスイスに移住。ルツェルンで没。
晩年スイスで教育に力を入れ、海野義雄、前橋汀子ら邦人ヴァイオリニストも薫陶を受けた。
以上
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