真空管アンプ修理体験記

AAFC例会資料

2014/01/26

担当 : 小笠原 富雄

 

 退職後、秋葉原のオーディオ店で真空管アンプ修理のアルバイトをしました。
 期間は10年、計496台修理しました。マランツ、マッキントッシュのビンテージアンプが主ですが、他にクオード、ランジバン、アルテック、WE、クラングフィルム、デッカデコラなどがありました。
 マランツ7(95台)、同9(59台)、同8(42台)、同5(33台)、マッキントッシュMC-275(24台)、同MC-30(23台)、同C-22(23台)、クオードⅡ(14台)、同22(5台)、WE91(3台)などが印象に残っている機械です。

以下はその店の修理方法です

[Ⅰ]  修理理念(基本方針)

・工場で製造され、出荷された時の状態に戻す(改造、改良はしない)。(下記1)
・何処に手を入れたか分からない様に修理するのが理想。

    1.作られた時の状態に修復する(復元する)
      伝統技術、工法、材料を受け継ぐ(日光東照宮の昭和の大修理など)
修理 2.現在の状態に修復する
      伝統技術、素材を受け継ぐ
      (油絵、日本画など美術品の修復、スペインでのキリストのフレスコ画の修復など)
    3.改修、改築
      外観やイメージを継承しながら最先端の技術を以って改修する
      (東京駅、歌舞伎座の改築など)

[Ⅱ] 修理手順

・健康診断方式(cf.対症療法)
1. 全部品を検査し、不良品を交換する、指定外の部品は良品でも交換する
  (良品)
  抵抗:誤差±10%以内(特に指定のないもの)
  チューブラコンデンサー:絶縁1000MΩ以上
  電解コンデンサー:容量誤差±50%以内、交流抵抗1Ω以内
  整流器(セレン):整流電圧誤差 回路図の±10%以内、整流波形がきれいな物
  真空管:動作電圧誤差 回路図の±10%以内

2. 不良部品交換後、B電源の波形を確認し、回路図上の各電極の電圧誤差が±10%以内であることを確認
3. シャーシー内外の清掃(掃除機、洗剤水洗い、アルコール、シンナー等使用)
4. 検査、音出し

[Ⅲ] その他

1. 半田付けについて
   半田は絡めてある線が見て分かる位に。多過ぎても、少な過ぎても駄目。
2. リード線、配線のラグ端子への付け方           
   ① 絡め型    マランツ、WE        マッキントッシュ
   ② 引掛け型   クオード
   ③差し込み型  クラングフィルム
3. マランツは民生用         ACバランス、DCバランスあり
   マッキントッシュは業務用     ACバランス、DCバランスなし

[Ⅳ] 道具、消耗品について  ――特に良いと思った物―――
 
   半田鏝:Weller     半田:Kester   ピンセット:FONTAX


本日の演奏
OBOE SONATAS BETWEEN 1700-1750     ACCENT ACC7804   
   


 

 以 上

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