1. “音楽の都”へ行く人が増えているが、リング(環状道路)の中の中心街の名所を巡るだけのケースが多い。
そこは、宮殿、大ホール、博物館、有名カフェなどがあり、音楽で言えば、オペラ・オペレッタ、演奏会などでウィーン・フィル、ウィーン・交響楽団、ウィーン少年合唱団などが活躍する“正装のウィーン”。
2. 一方、郊外にはウィーン市民が寛ぐ“普段着のウィーン”がある。代表的なのが、ウィーンの森の裾野に集まる「ホイリゲ」(その年に採れたワインの新酒を簡単な料理と一緒に出す居酒屋)であり、そこで奏でられる小編成の楽団や楽師による「シュランメル音楽」(18世紀後半にシュランメル兄弟が始めた民族音楽)である。
3. シュランメル楽団は、酔客の注文に応じて、ワルツ、ポルカなどの舞曲やオペレッタのアリア、民謡などを、夏は農家の中庭の木陰で、冬は暖かい室内でも独特のスタイルで演奏、ブラームスやシュトラウスなどもこれを愛したといわれる。
ウィーン訛りの歌には“古き良きウィーン”を懐かしむものや、ウィーンっ子の心意気などを語るものが多い。21世紀になって、ホイリゲも観光地化し、旅行案内にも記載され、団体客も来るなどかなり変化がみられるようになったが、ここでは、1960~70年代の歌を紹介する。
4.“Wiener Heurigenlieder”(ホイリゲの歌)、Julius Patzak(ウィーン生まれの名テナー)
とDie Grinzinger Schrammeln (グリンツイング・シュランメル楽団)の演奏
―AMADEO, AVRS 9070 St (LP,1968)―
① Weil i a alter Drehrer 3:12
(私は夜遊び好きな年寄り)
② I bin a Weaner Kind 3.40
(私はウィーンの子供)
③ Wann i nimmer singen kann 2:11
(私が歌えなくなったら)
④ Gemma,Gemma (演奏) 2:32
(ゲンマ、ゲンマ)
⑤ Der alter Stephansturm 2:50
(シュテファン寺院の古い塔)
⑥ Drunt’ in Lichtental 1:45
(リヒテンタールの谷間で)
⑦ I bin a echter Weaner 2:58
(私は本当のウィーンっ子)
⑧ I hab mir fuer Grinzing a Dienstmann engagiert 2:39
( 私はグリンツィングでボーイをしていた)
番外として
“Heurigenlied”(邦題「新しい酒の歌」―ドイツ映画「会議は踊る」1931の主題歌)
Werner Richard Heymann(ウェルナー・リヒャルト・ハイマン)作曲
原曲は、ワルツ「わが生涯は愛と喜び」Josef Strauss(1869)
及び、奥田良三による日本語版「歌あればこそ、世は楽し」
Wenn du verliebt bist und Weiss nicht wohin,
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恋したあんたがどこへ行けばいいのかわからなかったら |
Dann gibt’s nur eine Stadt, die hat, was keine hat.
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そんときゃ一つだけいい町がある
そこには他所にないものがある
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Die liegt im Herzen der Welt mitten drin,
Hast du den Rausch mal dort, weisst du’s sofort:
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そこは心の世界のその真ん中にある
そこでいい気持に酔えば直ぐに分かるさ
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Das muss ein Stueck vom Himmel sein,
Wien und der Wein, Wien und der Wein.
Das ward auf Erden nicht erdachat,
Denn das ist so himmerlisch gemacht.
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ウィーンとワイン、ウィーンとワイン
それこそ天国の片隅さ
地上じゃあ誰も考え付かない
それほど天上的に出来てるんだ
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Sitzt man vertraemt in Wien beim Wein
Und nicht allein, denn sieht man’s ein:
Das muss ein Stueck vom Himmel sein,
Wien und der Wein, Wien und Wein.
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ウィーンでワインを飲み、夢見心地で座り
お連れがいれば、よく分かるさ
ウィーンとワイン、ウィーンとワイン
それこそ天国の片隅さ
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Das sind die alten Geschiten von Wien,
Frag nu rein Wiener Kind, wo die zu hoeren sind.
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ウィーンにゃ昔話がたんとある
ウィーンの子供に訊いてみな
どこへ行けば聞けるかって
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Geh vor die Stadt, wo der Kirschbaeume bluehen,
Und jedes Bauernhaus plaudert’s aus.
(以下繰り返し)
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町はずれに行きなよ、あの桜の花が咲いてるところ
どの農家でもあんたに喋ってくれるよ
(田邉試訳) |