♪忘れ難きヴィーナーリーダー♪ -2

(郊外のホイリゲの夜)

AAFC例会資料

2015/01/25

担当 : 田邉 克彦

 

1. “音楽の都”へ行く人が増えているが、リング(環状道路)の中の中心街の名所を巡るだけのケースが多い。
  そこは、宮殿、大ホール、博物館、有名カフェなどがあり、音楽で言えば、オペラ・オペレッタ、演奏会などでウィーン・フィル、ウィーン・交響楽団、ウィーン少年合唱団などが活躍する“正装のウィーン”。

2. 一方、郊外にはウィーン市民が寛ぐ“普段着のウィーン”がある。代表的なのが、ウィーンの森の裾野に集まる「ホイリゲ」(その年に採れたワインの新酒を簡単な料理と一緒に出す居酒屋)であり、そこで奏でられる小編成の楽団や楽師による「シュランメル音楽」(18世紀後半にシュランメル兄弟が始めた民族音楽)である。

3. シュランメル楽団は、酔客の注文に応じて、ワルツ、ポルカなどの舞曲やオペレッタのアリア、民謡などを、夏は農家の中庭の木陰で、冬は暖かい室内でも独特のスタイルで演奏、ブラームスやシュトラウスなどもこれを愛したといわれる。
  ウィーン訛りの歌には“古き良きウィーン”を懐かしむものや、ウィーンっ子の心意気などを語るものが多い。21世紀になって、ホイリゲも観光地化し、旅行案内にも記載され、団体客も来るなどかなり変化がみられるようになったが、ここでは、1960~70年代の歌を紹介する。

4.“Wiener Heurigenlieder”(ホイリゲの歌)、Julius Patzak(ウィーン生まれの名テナー)
    とDie Grinzinger Schrammeln (グリンツイング・シュランメル楽団)の演奏
                   ―AMADEO, AVRS 9070 St (LP,1968)―

① Weil i a alter Drehrer 3:12
(私は夜遊び好きな年寄り)
② I bin a Weaner Kind 3.40
(私はウィーンの子供)
③ Wann i nimmer singen kann 2:11
(私が歌えなくなったら)
④ Gemma,Gemma (演奏) 2:32
(ゲンマ、ゲンマ)
⑤ Der alter Stephansturm 2:50
(シュテファン寺院の古い塔)
⑥ Drunt’ in Lichtental 1:45
(リヒテンタールの谷間で)
⑦ I bin a echter Weaner 2:58
(私は本当のウィーンっ子)
⑧ I hab mir fuer Grinzing a Dienstmann engagiert 2:39
( 私はグリンツィングでボーイをしていた)

番外として
“Heurigenlied”(邦題「新しい酒の歌」―ドイツ映画「会議は踊る」1931の主題歌)
     Werner Richard Heymann(ウェルナー・リヒャルト・ハイマン)作曲
     原曲は、ワルツ「わが生涯は愛と喜び」Josef Strauss(1869)
     及び、奥田良三による日本語版「歌あればこそ、世は楽し」

     

Wenn du verliebt bist und Weiss nicht wohin,

恋したあんたがどこへ行けばいいのかわからなかったら
Dann gibt’s nur eine Stadt, die hat, was keine hat.
                          
そんときゃ一つだけいい町がある
そこには他所にないものがある
Die liegt im Herzen der Welt mitten drin,
Hast du den Rausch mal dort, weisst du’s sofort:

そこは心の世界のその真ん中にある
そこでいい気持に酔えば直ぐに分かるさ

Das muss ein Stueck vom Himmel sein,
Wien und der Wein, Wien und der Wein.
Das ward auf Erden nicht erdachat,
Denn das ist so himmerlisch gemacht.

ウィーンとワイン、ウィーンとワイン
それこそ天国の片隅さ
地上じゃあ誰も考え付かない
それほど天上的に出来てるんだ

Sitzt man vertraemt in Wien beim Wein
Und nicht allein, denn sieht man’s ein:     
Das muss ein Stueck vom Himmel sein,
Wien und der Wein, Wien und Wein.

ウィーンでワインを飲み、夢見心地で座り
お連れがいれば、よく分かるさ     
ウィーンとワイン、ウィーンとワイン
それこそ天国の片隅さ

Das sind die alten Geschiten von Wien,
Frag nu rein Wiener Kind, wo die zu hoeren sind.
                          
ウィーンにゃ昔話がたんとある
ウィーンの子供に訊いてみな
どこへ行けば聞けるかって

Geh vor die Stadt, wo der Kirschbaeume bluehen,
Und jedes Bauernhaus plaudert’s aus.
  (以下繰り返し)

町はずれに行きなよ、あの桜の花が咲いてるところ
どの農家でもあんたに喋ってくれるよ
  (田邉試訳)

 

 以 上

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