D/A変換にともなう厄介なおはなし

AAFC例会資料

2018/04/29

担当 : 大塚 祐司

 

 1980年代より隆盛が続いているデジタルメディア(CD,MD、DAT、SACD、ネット情報、TV放送等)ですが、そもそも、メディアのデジタル化が行われた背景として、オーディオメディアにおける高品質化(周波数特性、ダイナミック特性、歪特性、加工特性等)の訴求がありました。元々アナログである音声信号をデジタルメディアにすることは、再びアナログに戻す過程が避けられないことを意味しています。

 これらの過程は、生鮮食品(アナログ)を凍結乾燥(A/D変換)し、食べる際に加水・加熱等(D/A変換)で食べられる状態(アナログ)に戻す過程と似ています。

 問題は、処理の前後でどれ位、元の風味・食感(品質)が保たれるかということで、特にD/A変換の品質は、デジタル化の成否を決定する要因となっております。

 この部分を担うのがD/Aコンバーターと言われるパーツですが、取り扱う周波数が数十KHz~数十メガHzという高周波帯域であり、いわゆるノイズが発生しやすい環境となります。さらにこの部分のノイズは他の部位に飛び火の如く悪影響を及ぼすことも少なくないといわれています。

 ネット上で公開されているCDデッキのノイズの事例スペクトラムと1Khz正弦波を以下に示します。

S社(13万円)

 

D社(50万円)

 

ノイズの少ない事例:P社DVD・SACDデッキ(実売2万円未満:ゴールドムンドの140万円の製品と同じ基盤)

 

 これらはA/Dコンバーターのノイズ自体は可聴帯域を遥かに超えた領域のものであっても、1KHzといった可聴帯域にも影響が及ぶ事例で、いわゆる音がデジタル臭いとか、硬い、ざわつくというような聴覚上の印象につながる要因になるようです。

 このような影響を避けるために、信号系統に1:1のアイソレーショントランスを入れて音質を改善する試みや、D/Aコンバーターの最終段に真空管バッファを付けて(真空管を使用すると自動的に数十KHzのローパスフィルターになる)高音質を得たという事例が見受けられます。

 ちなみに今回事例で紹介した各社の製品はS社「CDP-555ESD」、D社「DCD-SA1」、P社「VD-600AV」で、ノイズの状態はS→D→Pの順に少なくなります。一方、音質という観点では、ノイズ以外の要因も絡むため、Sが最良という印象がこのサイトには示されています。

 さて、可聴帯域にまでノイズの影響があるとすると、何とかする必要があるわけですが、最もノイズが大きかったS社の製品にカットオフ28KHzの3次LPFでノイズ軽減を図った結果を下記に示します。

対策前                対策後

   

 

対策の結果が聴感上どの程度の効果であるかは、実際にLPFを装着したS社「CDP-555ESD」にて皆さんご自身で評価願います。

試聴楽曲

  1. 虹の彼方に(シルビア・マクネアーvo、アンドレプレヴィンp)
  2. ストーミー・ウエザー(シルビア・マクネアーvo、アンドレ・プレヴィンp、ディビッド・フィンクb)
  3. 生きている限り(同上)
  4. ザット・オールド・ブラック・マジック(同上)
  5. アクセチュエイト・ザ・ポジティブ(同上)
  6. イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン/レッツ・フォール・イン・ラブ(同上)
  7. ブラジル(Akiko vo)
  8. Chega de Saudade (Akiko vo)
  9. バロック・イン・リズム(ヨー・ヨーマcello、クロード・ボリングp、マーク・ミッシェルb、ジャン・リュック・ダヤンdr)
  10. コンチェルタンテ(同上)
  11. チェロ・ファン(同上)

出展:オーディオデザイン社サイト

 

以上