”佐渡裕&シエナ”によるバーンスタイン・ガラ
(映像-DVD)

AAFC例会資料

2018/08/26

担当 : 高橋 敏郎


 

 

今年2018年の8月25日(土)は 文字通り20世紀アメリカを代表する最大の指揮者、作曲家、ピアニスト、音楽教育者でもあったカリスマ的スーパー音楽家レナード・バースタイン(1918 -90)(以下、愛称レニー)の生誕100周年に当たる。

今例会は その100周年を記念して最後の愛弟子と自他共に認める指揮者、佐渡裕率いるシエナ・ウィンド・オーケストラによるレニー名曲の数々を映像でお聴き頂きたい。(ライブ収録 : 2007年9月17日 東京芸術劇場大ホール - avex Label )

彼の音楽作品といっても 幾つかの交響曲、バレエ曲を含む多彩な管弦楽曲、オペラ、ミサ曲、歌曲などの声楽曲、室内楽やピアノ曲などシリアスなクラシック系、ミュージカル、ジャズ、マーロン・ブランド主演,エリア・カザン監督の名画「波止場」への優れた映画音楽など、広いジャンルに及ぶが、茲では以下の通り ウィンド用に編曲の広く知られた管弦楽曲、ミュージカル及びジャズに限定される。

1.「スラヴァ!」(1977) (編:C•グランドマン):3:45
本演奏会のオープニング曲。世界的チェリスト兼指揮者でレニー永年の親友だったロストロポーヴィッチ(1927-2007) の、アメリカのワシントン・ナショナル交響楽団の音楽監督への就任を祝して、レニー自ら作曲し献呈した曲。
スラヴァはロストロのニックネームだが、ロシア語では「栄光あれ」という意味。
生涯権力に翻弄されながらも、反骨を貫いたスラヴァの半生をスケッチした作品。後半にはロシアの専制政治をパロディ化するため オペラ「ボリス・ゴドゥノフ」の戴冠式でも演奏される有名な「スラヴァ」のメロディも取り上げられる。

2.ミュージカル「オン・ザ・タウン」より3つのダンス・エピソード」(1944)
(編:M・スティス):5:54
ミュージカル「オン・ザ・タウン」は1944年にブロードウエイ初演。500回近いロングランを続けたバーンスタイン初のヒット・ミュージカル。1949年にはジーン・ケリー、フランク・シナトラなどの主演で映画化された。(邦題は「踊る大紐育」)24時間の上陸許可を得た3人の若い水兵が、ニューヨークを舞台に恋人探しに奔走し歌って踊るという設定。本曲はこの中から3曲のダンス・ナンバーを選んで組曲化したもの。

3.同上「アイ・キャン・クック・トゥー」( I can cook, too) (編:星出尚志) :3:12    
3人の水兵の一人、チップは 早速 女性タクシー運転手ヒルディに見初められて追っかけ回される。その中でヒルディが「私は 料理も得意なのよ!」と言い寄るシーンで歌われるのが、この曲。ヴォーカルは日本ではユニークなゴスぺル・シンガーだった故 越智順子(惜しくも翌08年病没)が付き合っていた。

4.ジャズ「プレリュード、フーガ&リフス」(1949) :8:30
(“Prelude, Fugue & Riffs” - Solo Clarinet & Jazz Ensemble) - 中村めぐみ(cl)
1949年、米有数のバンドリーダー兼クラリネット奏者ウディ・ハーマンの委嘱で作曲。併し同バンドの一時解散で、暫し忘れられていたが、1955年レニーの指揮、ベニー・グッドマンのクラリネットで初演された。構成は最初が金管部による”プレリュード”(前奏)、続いてサクソフォン部による”フーガ”、最後がクラリネット・ソロで始まる全員による”リフス”の典型的3部構成。リフとは ジャズ用語で「繰り返し」を意味するが、その複数形。レニーは無類のジャズ好きでもあった。

5.ミュージカル「キャンディード」(1956)序曲 (編:C • グランドマン):4:32
1956年12月、ブロードウエイで初演。18C フランスの啓蒙思想家ヴォルテールによる同名(”楽天主義説”といった意味)の小説に劇作家リリアン・ヘルマンが脚色し、レニーが作曲。芸術的評価は高かったが 客の入りはさっぱりで、何回か改定が加えられた。レニー自身の人生観が反映されたりで内容的に難解だったのかもしれない。ただ序曲だけは例外で彼の管弦楽曲では出色の大ヒットだった。

6。ミュージカル「ウエストサイド物語」より”シンフォニック・ダンス”(1957)(編:岩井直溥):22:50
「キャンディード」の翌年,1957年9月ブロードウエイで開演するや、忽ち大入りで第一次公演だけで700回を超える。内容はご存知の通りニューヨークのスラム街を舞台にした「ロメオとジュリエット」の現代版。レニー最大のヒット・ミュージカルだが、1961年に映画化されるや、これも世界的に空前の大ヒットとなった。
1960年、この劇場用楽曲からリズム系名旋律を抜粋して管弦楽用に編曲したのが本組曲 ”シンフォニック・ダンス”。ここでは “プロローグ” で始まり ”サムホエア”  ~”スケルツォ” ~”マンボ”  ~ ”チャチャ” ~ ”ミーティング・シーン” ~ ”クール・フーガ” ~”ランブル” ~”フィナーレ” の9曲から構成・演奏される。

演奏者紹介
佐渡裕(サドユタカ):1951年、京都生まれ。87年、米タングルウッド音楽祭参加、バーンスタイン、小沢征爾に師事。89年、指揮者最高の登竜門、仏ブザンソン国際指揮者コンクール優勝、95年、第一回バーンスタイン国際指揮者コンクール優勝。以来パリO、ベルリン・フィル、ベルリン・ドイツSO,スイス・ロマンドO. など世界の名だたるオケを舞台に常時活躍する日本を代表するトップ指揮者の一人。

シエナ・ウインド・オーケストラ(略称 SWO )
1990年結成のプロの吹奏楽団。オオサカ・シオン(旧-大阪市音楽団)、東京佼成ウインドと共に日本を代表する吹奏楽団と言われ、97年以降 佐渡裕が首席指揮者を務める。本アルバムは日本吹奏学会第10回アカデミー賞制作部門賞受賞作品。

以上/高橋 記