Dulcissime, totam tibi subdo me!

AAFC例会資料

2019/01/13

担当 : 稲垣 慈見


 

Carl Orff (1895-1982)


1895.7.10  Munich 生誕
1911《5つの歌曲集出版》
   《ツァラトゥストラはこう語った》合唱付管弦楽
1913《犠牲》オペラ
1937《カルミナ・ブラーナ》
1938《月》
1939《真夏の夜の夢》劇音楽
1942《賢い女》
1943《カトゥーリ・カルミナ Catulli Carmina》
1945《ベルナウの女》
1946《アストゥトゥリ》
1948《アンティゴーネ》オペラ
1951《アフロディテの勝利 Trionf di Afrodite》
1959《エディプス王》
1982・3・29 Munich 死去


Carmina Burana
カルミナ・ブラーナとはラテン語で《ボイレンの歌集》という意味。(カルミナが歌集と訳されるのは分るが、ボイレンがなぜブラーナとなるのか。(独)beuが(羅)buとなる?)
ベネディクト派ボイレン修道院(Benedictine Monastery of Beuren near Munich)にて1803年に見つけられた、ラテン語とドイツ語による13世紀の歌と詩、をJoseph Schmellerが1847年に編集したもの。
オルフは1939年、聖木曜日にこの写本を入手した。250篇以上の詩から24篇を選んで作曲し、1937年フランクフルト国立歌劇場で初演された。

岡俊雄氏によれば、「カルミナ・ブラーナ初演後に、オルフは自作の出版担当者に『これまで書いたもの、それに不運にも君が出版してしまったすべての作品を破棄してもらいたい』と語った。彼の作品の特徴は、ロマン派様式、新ウイーン楽派、ルネッサンス・バロック様式の導入、新中世主義の融合にある。」としている。(この部分、いま手元に原文が見つからないため未確認。)また、石田一志氏によるとこの曲の特徴として
・明快で簡潔な形式と和声
・単旋律的な合唱(ユニゾーンかオクターブ、稀に3度、6度、5度)
・メリスマ(歌詞の一音節に、旋律の多音符が対応し、装飾の多い節回しをもつもの。グレゴリオ聖歌の作曲法に用いられたが、一般に東洋系の音楽に多く見られる。広辞苑)を効かせた独唱パート
・多様な躍動感にみちたリズム
・打楽器群を極度に充実させたオーケストラ
・音響ブロックを組み立てたようなオーケストレーション
をあげている。   

以上、主として石井歓、浅里公三、岡俊雄及び石田一志氏によるライナーノートの抜き書き。
私見を加えさせてもらえば、「ラテン語の語形変化による音韻が、快適なリズム感を醸成している。」
なお、Catulli CarminaとTrionf di Afroditeの曲想は、Carmina Buranaと似ていてる。いわゆる現代曲に比べて分りやすい。また、Scriabinの《法悦の詩》と比べると、詩で表現されている分だけより直截的。

曲の構成は

  1. Fortuna Imperatrix Mundi(運命の女神、世界の支配者)第1曲−第2曲
  2. I    Primo vere(春)第3曲−第5曲
  3.      Uf dem anger(草原にて)第6曲−第10曲
  4. II   In Taberna(酒場にて)第11曲−第14曲
  5. III  Cour d’amours(求愛)第15曲−第23曲
  6.     Blanziflor et Helena(ブランチフロールとヘレナ)第24曲
  7. Fortuna Imperatrix Mundi(運命の女神、世界の支配者)第25曲

 ------この部分のあらすじ、拙文につき、当面省略-----石井歓氏の対訳を添付。 

Ozawa, Berliner Philharmoniker (Berlin Dec.31, 1989 Silvester Concert)
小沢征爾指揮のCarmina Buranaには3枚のCDがある。

  1. Boston Symphony, New England Conservatory Chorus and Children Chorus, Evelin Monde, Stanley Kolk, Sherill Milnes (RCA Victrola 1984) 
  2.  Berlin Philharmoniker, Shin Yu-kai Chorus, Knaben des Staats und Domchores Berlin, Edita Gruberova, John Aler, Thomas Hampson (1988)
  3. Berlin Philharmoniker, Shinyukai Choir, Knaben des Staats und Domchores Berlin, Kathleen Battle, Frank Lepardo, Thomas Allen (1989/12/31) 

1988年の定期演奏会でカラヤンに代わって小沢が指揮をして好評であったことから、1989年のジルベスターコンサートが実現したと書いてある。小沢征爾指揮以外にも、定評のある録音(たとえばEugen Jochum, Chor und Orchester der Deutchen Oper Berlin, Gundura Janowitz, Gerhard Stolze, Dietrich Fischer-Dieskau)があるが、Kathleen Battleのソプラノは何人を持ってしても代え難い。

Kathleen Battle のCarmina Buranaをきく
第23曲 Dulcissime, totam tibi subdo me!(私の愛しい人、私のすべてをあげましょう!)は絶品。

以上