「夏の夜の夢」の音楽

AAFC例会資料

2019/06/23

担当 : 塚田 繁


 

シェイクスピア A Midsummer Night’s Dream
1595年前後に作られた喜劇

主要登場人物
ライサンダー:アテネの若者、ハーミア:ライサンダーと相思相愛の仲
ディミートリアス:ハーミアに片想い、ヘレナ:ディミートリアスに片想い
町の職人(ボトム他)
オベロン:妖精の王、ティターニア:妖精の女王、パック:オベロンに仕える妖精

あらすじ
公爵の結婚をひかえたアテネ、父に結婚を認められないハーミアとライサンダーが森へ駆け落ち、ディミートリアスとヘレナも後を追う。
パックのいたずらで、青年二人がいずれもヘレナを愛してしまう。女同士の大喧嘩。
妖精の王と女王も夫婦喧嘩中、オペロンが腹いせにティターニアに魔法の薬をつけ、妖精の女王は、ロバに変身されたボトムを愛する。
喧嘩も終わりティターニアはもとに戻り、4人の若者も2つのカップルで丸く収まる。
アテネでは公爵と若者2組の結婚式と町の職人による寸劇。パックが後口上。

本日の音楽

1.メンデルスゾーン:「夏の夜の夢」序曲作品21(1826年作曲)

オットー・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団 途中まで(EMI 1960)

2.ヘンリー・パーセル:セミ・オペラ「妖精の女王」(1692年初演)第2幕より

    1. “Come all ye songsters of the sky”  ローレンス・デイル(テノール) 2’14″
    2. 三重唱 “May the God of Wit inspire” チャンス、デイル、マイケルズ‐ムーア 2’48”
    3. 合唱 “Now join your warbling voices all”   0’37”
    4. “Sing while we trip it” 、妖精の踊り バーバラ・ボニー(ソプラノ)、合唱  3’54”

ニコラウス・アーノンクール指揮コンチェントス・ムジクス・ウィーン (Teldec 1994)

3.ベンジャミン・ブリテン 歌劇「夏の夜の夢」第1幕から

導入部 山を越え、谷を越え             4’04”
ブリテン指揮ロンドン交響楽団  (Dec 1966)

4.サティ:「夏の夜の夢」のための5つのしかめ面

前口上-くだらないことー追いかけ回しー大騒ぎー終わりに      3’15”
ミシェル・プラッソン指揮トゥ-ルーズ・キャビトル国立管弦楽団 (EMI 1988)

5.メンデルスゾーン:劇音楽「夏の夜の夢」作品61(1842年)から

    1. スケルツォ  シャルル・デュトワ指揮モントリオール交響楽団   4’31”
    2. 夜想曲     ペーター・マーク指揮ロンドン交響楽団         6’22”
    3. 終曲       小澤征爾指揮ボストン交響楽団 吉永小百合   5’47”

 

参考
聖ヨハネ祭日:洗礼者ヨハネの誕生を祝う6月24日(イエスキリストの半年前に生まれた)。古代の夏至祭を引き継いでいる。聖ヨハネ祭の前夜には、妖精や魔女が現れると信じられていた。

ヘンリー・パーセル:英国バロック期最大の作曲家。1659年生まれ、王政復古期の王室礼拝堂を中心とする宗教曲、器楽曲、名誉革命前後からの劇音楽が主要作品。1695年36歳で死去。

「夏の夜の夢」 映画化
1935年 マックス・ラインハルト監督 オリヴィア・デ・ハヴィラント他
音楽編集:コルンゴルト、バレエ振付:ブロニスラヴァ・ニジンスカ
1999年 マイケル・ホフマン監督キャリスタ・フロックハート、ミシェル・ファイファー、アンナ・フリエル他   音楽:サイモン・ボズウェル
他にRSC/ピーター・ホール監督(1968年)、/エイドリアン・ノーブル監督(1996年)

「夏の夜の夢」その他の関連音楽
カール・オルフ:「夏の夜の夢」付随音楽 1939年、1944年、1952年、1964年版
ヴォーン=ウィリアムズ:三つのシェイクスピアの歌、第3曲「山を越え、谷を越え」(1951)
ルネ・ゲルバー(1908-2006):歌劇「夏の夜の夢」
ロバート・パターソン(1970生):弦楽四重奏のための「真夏の悪夢」  
アルフレート・シュ二トケ(1934-1998):「夏の夜の夢、ではない」(1985)


対訳

「妖精の女王」

①精霊(テノール)

Come, all ye songsters of the sky,     おいで、天のすべての歌い手たち、
Wake and assemble in this wood;       目を覚まして、この森に集まれ;
But no ill-boding bird be nigh,          でも不吉な鳥は近づかないで、
None but the harmless and the good.     無害で良きもの以外はお断り。

②三人の精霊と合唱

May the god of wit inspire        機知の神が聖なる9人に霊感を与えて
The sacred Nine to bear a part;    一つの役割を担わせて下さいますように!
And the blessed heavenly choir            祝福された天上の合唱が
Show the utmost of their art.          その芸の極致を示しますように!
While echo shall in sounds remote          そしてこだまが遠くから
Repeat each note.              すべての音を繰返して響かせますように。

③合唱

Now join your warbling voices all.  さあ、皆さんの素晴らしい声を全部合わせて

④ソプラノ、合唱

Sing while we trip it upon the green;       野原を駆け抜け歌って下さい
But no ill vapours rise or fall,        でも悪い空気が漂ってはいけません
Nothing offend our fairy Queen.   われらが妖精の女王を傷つけないのです。
                                       (戸口幸策訳)

「夏の夜の夢」ブリテン
Fairies                           妖精たち
Over hill, over dale, thorough bush,        山を越え、谷を越え 繁み いばらを
Thorough brier,                          かいくぐり
Over park, over pale thorough flood,     庭や垣根を 下に見て 流れに浮び
Thorough fire,                           火にも舞い
We do wander everywhere,                   心のままに 駆けめぐる
Swifter than the moone’s sphere;                  月より早い この翼
And we serve the Fairy Queen             妖精の女王様の お言いつけ
To dew her orbs upon the green.         緑の芝の濃い輪形 露で濡らしに
 Four Solo Fairies
Cowslips tall, her pensioners be,                 粋な桜草は お小姓衆
In their gold coats, spots you see,          それ 金の上衣に ぴかぴかと
Those be rubies, fairy favours,             あれはルビー 女王様の贈り物
In those freckles live their savours.           一つ 一つに 香りがこもる 
All Fairies
We must go seek some dewdrops here     これから露をさがしに行かなければ
And hang a pearl in every cowslip’s ear. そして桜草の耳たぶに真珠の玉をかけないと。  Puck                         パック
How now, spirits?                              やあどうだい、妖精たち
Fairies                        妖精たち
Or I mistake your shape and making quite:  その体つき、もしあたしの間違いでなければ
Or are you not that shrewd and knavish spriteあなたは、あのすばしっこい、いたずらっこ
Call’d Robin Goodfellow?         の妖精、ロビン・グッドフェローに違いない。
Are you not he,                          そうでしょう?
That frights the maidens of the villagery,            村の娘を驚かしたり、
Skim milk, and sometimes labour in the quern,  どこかのおかみさんが息を切らして
And bootless make the breathless         ミルクを掻きまわしているそばから、
huswife churn,         その上すみのクリームを掬い取って、むだ骨おらせたり、
And sometimes make the drink to bear no barm, ビールの酵母を泡立たなくさせたり、
Mislead night-wanderers,                 夜道を歩む旅人を迷わせたり、
laughing at their harm?       そうして人が困るのを見ておもしろがっている。
You do the work and they shall have そのくせ、ホブゴブリン様とかあたしのパック
good luck,                       とか呼んでくれる人たちには、
They that Hobgoblin call you, and    いろいろ力になってやり、幸運を授けるという、
sweet Puck!                  そのパックさんではなくて、あなたは?
Puck                       パック
But room, fairies, here comes Oberon. おっと、どいた妖精さん、オベロン様がおいでだよ。
Fairies                      妖精たち
And here our mistress;                  それに女王様が向こうから。
Cobweb                    蜘蛛の巣(妖精)
Would that he were gone.   王様、あのまま行っておしまいになればいいのだけれど。
                                            (福田恆存訳より)

以上