「古今東西 変わらぬものは」

AAFC例会資料

2019/09/08

担当 : 藤井 千惠子


 

太古の昔から音とは 大自然の発する音。 風・虎落笛・樹ずれ・葉擦れ・落ち葉・蓮の花の開く音・波・海鳴り・雷鳴。鳥・虫・獣の声。それって音楽になるの? では音楽って何?
私たちが生まれた時 発した音。 それは声。声は楽器。一人一人が 楽器の持ち主。

 

1.ジョン・ケージ(1912―1992) 「4分33秒」 第一楽章。    0:33 

さて本日は「中世を駆けめぐる放浪楽士」のCDをメインに 人の心を聞いてみます。
中世と云うと5~15世紀までを一括りに云うので、細分するなら12世紀から15世紀なので「中世盛期」のものです。
西洋では放浪楽士のことをジョングルール(オック語:フランス語南部の古語)と呼んでいます。
CDメンバーは5人。古楽器を駆使して演奏します。

2.ジョバンニ・アンブロジオ:プティ・リャンズ 15世紀イタリア     1:59

放浪楽士の一団が舞曲を演奏しながら村へやって来ます。誰でも自然と踊り出しそう。

3.後白河法皇(編)春の焼け野に菜を摘めば 梁塵秘抄302 12世紀日本 曲:近藤治夫 6:06

4.後白河法皇(編)柴の庵に聖おわす    梁塵秘抄303 12世紀日本 曲:近藤治夫 1:14

5.作者不詳::羊飼い娘が朝早く カルミナ・ブラーナより 13世紀ドイツ原歌詞ラテン語 3:22

※ここで云うカルミナ・ブラーナとは カール・オルフ(ドイツの作曲家1895―1982)が作曲した「世俗カンタータ カルミナ・ブラーナ」ではありません

本来 カルミナ・ブラーナとは19世紀初めにドイツ南部バイエルン選帝侯領にあるベネ
ディクトボイエルン修道院で発見された詩歌集で、11~13世紀に書かれたと推定されます。

詩歌は約300編もあり、古フランス・古イタリア・ラテン・中高ドイツからなる各言語で書かれ、内容は若者の怒りや恋愛の歌、酒や性・パロディなどもあり、修道院へ来た学生や修道僧たちが残したものと思われます。

1/4ほどネウマ記法(4線に四角い音符の様なものが点在)で書かれものも残って居るようですが、楽譜として演奏するのは困難です。
古楽演奏は推定作曲・アドリブで成り立つことが多いようです。

○余談 先日9月4日、Bunkamura30周年記念フランチャイズ特別企画「オルフの世俗カンタータ カルミナ・ブラーナ」を観聴きしました。
指揮:アンドレア・バッティストーニ、管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団、ソプラノ:今井実希、カウンターテナー:藤木大地、バリトン:与那城
バレー:Kバレエカンパニー、構成・演出・振付:熊川哲也

世界初演という事でしたが音楽のみならず、視覚に訴える素晴らしいものでした。

世俗カンタータの内容は 悪魔ルシファーに恋した女神フォルツーナは子を宿し、成長した息子アドルフは女神を失脚させ、人間界に紛れ込み自分と触れ合う、全ての良き者を堕落に追いやる。世の中は闇に満ち混沌とする。母の女神は我が子アドルフを自らの手で抹殺し、世界は均衡が保たれる。

6.作者不詳:サルタレッロ 14世紀イタリア               2:13

中世舞曲のうちでも有名な一曲。テーマに続きアドリブを経て再びテーマへ戻る。
中世的な騒々しさ・奔放さ・猥雑さがある。

7.ギラウト・デ・ボルネイユ:逢い引きの朝(アルバ) 12世紀フランス  5:58

アルバとは夫のいる貴婦人の部屋を訪れた翌朝、別れを惜しむ騎士の心を歌ったもの。
この歌は見張り役の男が心配して気が気ではないという歌詞。最後に騎士はこう歌う。

我が親しき友よ、素晴らしい一夜だった。夜明けも望まぬほどに。この世で最も美しい人をこの腕に抱きしめているのだから、もうどうでもいいのだ、焼きもち男も、夜明けも。  原歌詞オック語 

8.後白河法皇(編)恋ひ恋ひてたまさかに逢ひて寝たる夜の 梁塵秘抄450 曲:近藤治夫4:04

9.後白河法皇(編)恋ひ恋ひてたまさかに逢ひて寝たる夜の 梁塵秘抄450 曲:桃山晴衣
              
10.後白河法皇(編)わが子は二十になりぬらん 梁塵秘抄365 曲:桃山晴衣

11.後白河法皇(編)わが子は二十になりぬらん 梁塵秘抄365 曲:近藤治夫    

不詳:極道の歌 カルミナ・ブラーナより 13世紀ドイツ 曲:近藤治夫 2:50
半生を極道として過ごしてきた男の悔恨の歌 梁塵秘抄と通ずるのでつなげて演奏

12.後白河法皇(編)遊びをせんとや生まれけん 梁塵秘抄359 曲:近藤治夫 1:13

13.後白河法皇(編)遊びをせんとや生まれけん 梁塵秘抄359 曲:桃山晴衣 

けれど世の中 平安で無ければ のんびりオーディオ三昧とはいきますまい。
平和であれ!

14.パブロ・カザルス編 「カタロニア民謡 鳥の歌」 ホワイトハウス・コンサート。3:22 

1971年10月 94歳のカザルスは 国連本部でカタルーニャの鳥は「ピース、ピース」と鳴くと語ったことは有名です。
それに先立ち1961年11月 ケネディ大統領の要請で演奏した録音を再編したCDでお聴き下さい。

米「中世を駆けめぐる放浪楽士」ジョングルール・ボン・ミュジシャン 作曲:近藤治夫

・名倉亜矢子(歌・ゴシックハープ他)
・辻 康介(歌・語り他) 上田華央(中世フィドル・レベック他)
・近藤治夫(バグパイプ・ハーディーガーディー・テイバーパイプ他)本邦初のバグパイプ工房を開設

制作・作曲・各種楽器演奏。レーベル ALCD1128

米 遊びをせんとや生まれけん~「梁塵秘抄」の世界

・桃山晴衣(1939―2008)
6歳より三味線を習い 古曲宮園節を継承しながら、歌が生きている状況そのものを創造する事に努め、梁塵秘抄の蘇生をライフワークとした。 

2019年9月8日 例会後半 聴いた楽器:使用楽器 
1.各人の心
2.5弦フィドル、バグパイプ、ルネサンス・サイドドラム、タール、カルタール
3.ハープ、5弦フィドル、ハーディーガーディー
4.ハープ、鈴
5.様々な動物の鳴き声(ゲムスホルン、クルムホルン、カラス笛、シュリリング・チキン、コルナミューゼ、ラウシュブファイフェ)クルムホルン、ウッドブロック、鳥笛
6.ラウシュブファイフェ、ルネサンス・サイドドラム、テイバー、タブルカ、カルタール
7.5弦フィドル、ルネサンス・フルート
8.5弦フィドル、ハーディーガーディー
9.三味線
10.ウード
11.カルタール、5弦フィドル、ヒュンメルヒェン、フレームドラム
12.4弦フィドル、クルムホルン、ダルブカ、鈴
13.三味線
14.チェロ(パブロ・カザルス)、ピアノ(ミエチスラフ・フォルショフスキー)

以上