映画 ”真夏の夜のジャズ”

AAFC例会資料

2019/09/08

担当 : 高橋 敏郎


 

映画 ”真夏の夜のジャズ”(Jazz On A Summer's Day)は、1958年開催の第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバル(Newport Jazz Festival)の模様が記録された米ドキュメンタリー映画。

1960年に公開されたが、当時 世界のジャズ愛好家から熱狂的に歓迎されるとともに、日本でも特に昭和生れの戦後世代の間で、この映画が契機でジャズに興味を持ち、その後熱烈なジャズファンになった人も多いと言われた。かく申す筆者もその一人であるが、爾来、世界のジャズ界発展に及ぼした影響の甚大さは計り知れない。

本ジャズフェスティバルは、1954年にボストンのプロモーターのジョージ・ウェイン(George Wein)によって創設。毎年7月4日の米独立記念日を挟んで当初は米ロードアイランド州ニューポートの野外音楽堂で開催され、忽ち米ジャズ界最大の年中行事となった。本映画の監督は著名写真家で「ライフ」誌などで活躍のバート・スターン。音楽監督にはジャズ研究家でもあった名物プロデューサー、ジョージ・アヴァキァンが担当している。

全編の通し上映は時間的にかなり長くなるので 今回は一部省略の上  下記曲目・演奏の順で放映したい。

 

曲順  演奏者(演奏団体)名  作品名  (演奏時間)収録Chapter No.

1.ジミー・ジュフリー3:“トレイン・アンド・ザ・リヴァー” ( Train and The River) (4:34)-Chap.1  

(リーダー)ジミー・ジュフリー(Jimmy Giuffre)(1921-2008)
米テキサス・ダラス生れのジャズ・ミュージシャン(クラリネット、サックス、作曲、アレンジ)
50年代以降、ジャズ・ウエストコースト派で指導的役割を果たした。ジミーにボブ・ブルックマイヤー(トロンボーン)とジム・ホール(ギター)を加えた3人の名手によるグループ、ジミー・ジュフリー3によって、本映像のオープニング・ナンバーが爽やかに演奏される。

2.セロニアス・モンク・トリオ:“ブルー・モンク(Blue Monk) (2:54)-Chap.4

セロニアス・モンク(Thelonious Monk)(1917-82)
ニューヨーク生まれのアメリカの代表的ジャズピアニスト
ユニークな即興演奏や数々の奇行とともに多くの名スタンダード・ナンバーの作曲家としても知られるモダン・ジャズ創始者の一人。
ここで演奏される“ブルー・モンク”(Blue Monk) も彼の代表作の一つ。

3.アニタ・オデイ(ボーカル):
    a."スイート・ジョージア・ブラウン”
(Sweet Georgian Broun)(4:28)-Chap.7
    b."二人でお茶を” (Tea for Two)(3:47)-Chap.8

アニタ・オデイ(Anita O'Day) (1919-2006) シカゴ生まれ
41年、ジーン・クルーパ楽団、44年、スタン・ケントン、ウディ・ハーマン楽団を経て、47年独立。
ハスキー・ヴォイス、豊かで自在なスイング感とモダン感覚に溢れる白人女性ジャズ・ヴォーカリストの最高蜂的存在。

4.チコ・ハミルトン・クィンテッド:“ブルー・サンズ”(Blue Sands)(5:45)-Chap.17

リーダー、チコ・ハミルトン(Chico Hamilton)(1921-2013) ロスアンジェルス生まれ
ドラムスや作曲・編曲を担当したウエスト・コースト派の重鎮。ドラムスのメロディアスな演奏に特徴があり、チェロやフルートなどを加えたクラシック調の多重奏による響きも新鮮な効果を上げる。
58年上映の映画「成功の甘き香り」など、数多くの映画音楽も手がけた。

5.ルイ・アームストロング&オールスターズ:
    a.“タイガー・ラグ”(Tiger Rag)(2:12)-Chap.20
    b.“ロッキング・チェア“(Rochin Chair) w/ J・ティガーデン(JackTeagarden)(3:28)-Chap.21
    c.”聖者の行進”(When the Saint 's Go Marchin' In )(1:50)-Chap.22

ルイ・アームストロング(Louis Armstrong)(1900-71) ニューオリンズ生まれ
コルネット、トランペット、ヴォーカル(特にスキャット技法)
ニューオリンズ、シカゴ、ニューヨークを舞台に常にジャズの中心的存在として活躍し「ジャズの王様」と呼ばれる。
生涯吹き込み録音曲は3千以上を数え、映画出演も多かった。

*ジャック・ティガーデン(Jack Teagarden) (1905-64) テキサス生まれ
代表的トロンボーン奏者で、ジャズ特有の革命的奏法を開発・完成させた。
47年、ルイのオール・スターズに加わり、かなり長期間滞在したが、このころが人気面でも絶頂だった。この映画でもルイとの掛け合いで絶妙なボーカルを聴かせる。

6. マヘリア・ジャクソン:”主の祈り”(The Load's Prayer)(3:30)-Chap.25

マヘリア・ジャクソン (Mahalia Jackson)(1911-72) ニューオリンズ生まれ
5歳から教会聖歌隊で歌ったが、16歳からシカゴの教会で本格的に聖歌を歌うようになる。
その後ベッシー・スミスやマ・レイニーに傾倒し多大な影響を受ける。
45年から録音を始め、47年、”ムーヴ・オン・アップ・ア・リトル・ハイアー”が大ヒットする。
黒人宗教歌謡の大御所だったが、本曲最後の”主の祈り”もまた深く感動的である。 

PS

尚 参考までに 当AAFCクラブ20周年記念式典にもご参加いただいたジャズ評論家、瀬川昌久氏は当映画が撮影された1958年開催の第5回ジャズフェスティヴァルに実際に立ち会われた唯一の日本人と言われ その時の詳細な見聞レポートが日本のジャズ月刊誌「スイング・ジャーナル」60年8月号にも掲載されていた。                                    

以上