ジジイは今日も今日とて、ひねひねと、真空管を手にして眺めながら、ニタニタとほくそ笑むのである。仕事?・・あることは在るんだが、明日ね。・・・・・これでは生活のために仕事では無く、趣味のための軍資金稼ぎの仕事となっておる。紅顔のラジオ少年はいつの間にか、厚顔のRCGつまり、ラジオ・クレージイ・ジジイに成り下がってしまっておる。イカンイカン・・・いや遺憾、遺憾。
秋葉原でアメリカ軍放出のある真空管が何年か前から、転がっておったが、何の真空管か怪しげで、氏素性も?状態であったが、関西の真空管AMPの製作グループから使用し始め、それなりのAMPが製作できると、月刊誌に掲載されだすと、目の高さぐらいに、パレット箱が積んであったのが、数ヶ月で無くなってしまった。値段も2倍近くに跳ね上がり
今では店頭のごく一部に少しだけ置いてある。
物の値段も、キットメーカが大量に売り出し、好評であると、自分も製作しようかなーと考えた時は、ジジイの財布には、きつい値段に化けてしまっているのが世のシキタリで
夢多きラジオジジイは、いいや、RCGは宝くじでも当たらんかいなと、買いもしないのに
今日もじっと手を見たいのだが、老眼鏡を当てないと、己のお手手の爪を切れないのである。
きたネーお手手だな、と思いつつ、百戦錬磨のお手手である。誰だ?百戦錬磨はジジイのお口だろーが。 なんか後ろで聞こえたような聞こえないような、空耳じゃろー。最近は富に人の話がよく聞き取れん、・・・同居人の会話なんぞは、主語がなくなり本題の言葉が先に飛んでおる。かくして、耳が難聴と言う事にしとけば、ハリケーンは通過するのである。あなた、もう春1番噴きました? そう、スーパーハリケーンが通過しましたか。しない人は、今後気をつけましょうネ。
ほくそ笑みながら、100本過の真空管を撫で回しておると、後ろから随分沢山の数があるネーと、お声がかかった、食事時の前に、お店を広げるものではないのである。話がややこしくなる。いや、大変ややこしくなってしまう。最近大量に購入していても、そう長年集めたんだよ、と お口がそく、自然に開く。そう百戦錬磨生活の知恵である。
天気晴朗なれど、波高し お口の回りは潤滑に。
第66話につづく