紅顔の美少年は、(O−usokoke!)鉱石ラジオを作ったばかりに、人生の大間違いをシデカシ、洞窟の奥にある己の蝋燭の残りの長さを知らないまま、かろうじて炎がともっていることを良い事に、朝は遅く起き、昼に近い時間に朝飯を食らい、やおら半田ごてを振り回し、今日もヤニの煙を吸い込み、ゴホゴホと気管支に悪いことをしている。
震える手は、なぜか まっ昼間から、アルコールを胃袋に流してピタリと止まったのを幸いここぞとばかりに、衰えた目玉をひん剥きつつ、電気部品をサー付かんかい!と半田の小手先を押し付けている。
はてさて、じじは半田付けはいいが、土台となる筐体のアルミシャーシの穴あけは苦手中の苦手で、あんまり好きではないのだ。これが無ければナーと思いつつ、グラフ用紙に部品を並べ、あーでもない、こーでもない、と時間は過ぎるばかり、気が付くと光陰矢のごとし、残りの人生蝋燭が短くなっていくことも感覚が無くなって毎日が過ぎ去っていく。
ある日、ジジイの一大決心の元、とっても良い天気の日に NO天気なジジイは日ごろの怠慢な体に鞭打ち、早飯を食らい、出すものは出してから、今日は金属加工の一日と決意し、半分傾きかけたぼろ屋の玄関でガリガリともうろくした目玉をひん剥き、いいかげん磨り減ったノギスで測りながら、老眼鏡をこすりながらアルミの板をヤスリで擦っている。機械工作は素人なのに、イッチョ前に道具だけは揃っているのが長年のジジイのオタク振りを表している。おまけに最近改築のため閉店したホームセンターの投売りの工具類を半値以下で手に入れてご機嫌である。日ごろ買えなかったものも手に入れてニタニタと作業をやるのである。これがなんともスローモーなので終わらないその訳は・・・・。
穴あけの時にアルミの粉が飛ばないように新聞紙を重ねて後始末が簡単に終わるように轢いている。この新聞紙の一番下のほうに小さな穴が開いておる。日ごろよく見ないが、A社は8穴、Y社は9穴の小さな全数ページに貫通穴がある。これは印刷時にとっても高くて大きいビルの中で建物全体が印刷機みたいな工場で、最終に近い段階でページの分だけ印刷された紙をまとめて、一束にまとめる時に連続印刷の切断時、引っ張るために枚数分だけ引っ掛けた金具の、名残の穴で、印刷機が各新聞社で違う仕様で出来ているのが面白い。色々観察すると、中のページほど時間的に早めに出来上がってもいい記事が挟まり、一番早く伝えてホットな記事ほど外側に印刷されている。新聞によるがページの欄外に印刷所のビル階数まで印刷されてカラーの調整に使われた小さな点々の印が入っている。ジジイは暇なんだなー穴あけしながら見ていてチーとも進まん。
89話につづく