低音と一口に言っても皆さんそれぞれにイメージがしてる音が違うと思うのですが、普通低音として感じているのは60から120Hzぐらいの音だと思います。しかし、ここではそれ以下の超低音の再生がどのように再生音楽に影響を与え、どの程度重要かを考えてみたいと思います。
人間は20から20000Hzまで聞こえるとされているのに、市販のスピーカセットで低音が50Hzぐらいまでフラットに出るものは結構あっても、可聴範囲の20Hzまでフラットというのは実はほとんどありません。じゃ、それでは問題にならないのかというと、楽曲の基音として40Hz以下が必要な場合はごく限られているますし、その時もその倍音が再生されていれば音楽としての全体の感興を損なうことはほとんど無いからでしょう。そのような訳でスピーカが20Hzまで出ていなくても、クレームがつく事がないのです。
でも本当にFiHiとして超低音が要らないのかという観点から考えてみると、クラシックなどでは演奏会場の雰囲気を再現したいと考えたときに、実際のホールでは演奏された音の音程を聞き取るだけでなく、楽器が出すのそれ以外の幅広い周波数の音を無意識に同時に聞いていて、それを含めて演奏会場に居るという感覚を持っているはずなのです。
例えば大太鼓のようなインパルス性の音の場合、ホールでは圧倒的な音圧を感じます。それはただ音が鳴っているというより空気の圧力のような音を聞いています。理論的にはインパルスやステップ性の音は低域までの非常に広い周波数レンジの音を持っていますから、この感じを再現するにはかなり低い周波数までの再現が必要なのです。更に楽器の胴鳴りや床、部屋お振動なども同じようにこの低い周波数の成分が有ると無いとではかなり聴感上も異なり、超低域が出ていないと慣れ親しんでいる実環境と再生音との差を無意識に感じてしまうのではないかと思います。
では本当にHifiに超低音が必要かどうかは、実験してみるしかありません。20Hz近くまでを再生するのは通常ではかなり難しいものですが、最近はサブウーファの良いものも出てきているので徐々に取り組みやすくはなっていると思います。
今回はスペースファクタを考えて管共鳴を利用したサブウーファを作って実験してみました。管共鳴の場合には1/4波長の長さが必要なので、20Hzとすると約4mの長さになります。実験の都合で25Hz3mのパイプで試してみました。
メインのスピーカは約50Hzまではフラット、40Hzから下がっているので、スーバーウーファは40Hzクロスとし、中域以上を汚さないように−40dB/octという急峻なフィルターでハイカットします。つまりスーパーウーファとしては25〜40Hzの帯域の再生となります。
で、音楽を聴きながら超低域をONOFFしてみると、サントラなどの効果音やフュージョン系のシンセサイザーなどは超低音が入っているものは、当然はっきりと基音が再生されるかどうかの違いが分かります。ソースに入っている音を全て再生するにはやはり広帯域の再生が必要なことは言うまでも無いでしょう。しかし、通常の音楽で広帯域が必要かというのが問題です。
そこで通常のクラシックなど直接的に音は感じない物を再生させてみると、低音なそれほど出ていないのにかかわらず、不思議に音が落ち着きを持ってドッシリと足が地に付いたパランスの再生になります。比較してみると分かるのですが、慣れてくると超低域がないと足元がスースーする様な物足りなさを感じるようになります。この時低域の音だけをやはり通常の音楽では聞くとほとんど聞き取れない様なレベルの音ですが、それでも全体の感興に与える影響は大きいのですね。
ここの所が雰囲気の再現に超低域が不可欠だと言えるところなのでしょうか。一度体験してみて頂ければこの違いが分かると思うのですが、装置が大がりになるのが低音再生の難点です