(6月18日)
石田さん
古いオーディオ雑誌を見ていましたら、面白い写真と記事が見つかりました。
少し前に行ったエール音響に大きくて立派な家具みたいなスピーカーボックス(発注取り消しになったと言っていた代物)がありましたね、あれと同じものを南口重治(テイチクレコードの社長)さんが持っていました。
まだ社長になる前(?)のかなり若い時のようですが、リスニングルームの写真に例のスピーカーが鎮座していました。
想像するに南口さんところのこのスピーカーを聴いた人が、惚れ込んで同じものを造ってくれとYL音響に発注したんでしょう。
南口さんは、五味康祐と親しくて、後になって、JBL4350で五味康祐をして自宅のオートグラフを聴くのが嫌になったと言わせたお金持ちのオーディオマニアです。
この五味康祐さん、菅野沖彦さんところを訪問してこんなことを言っています。
一言でいうと、其処で鳴っているのはモニターの鋭敏な感覚が絶えず検討しつづける音であって、音楽ではない。音楽の情緒をむしろ拒否した、楽器の明快な響き、バランス、調和と言ったものだけを微視的に聴きわける、そういった態度に適合する音である。
無論、各楽器が明快な音色でバランスよく、ハーモニーを醸すなら当然そこに音楽的情緒と呼ぶべきものは生まれるはずだと、人は言うだろう。
だが理屈はそうでも聴いている私の耳には、各楽器はそのエッセンスだけを鳴らして音楽を響かせようとしていない、そんなふうに聴こえる。
たとえて言えば、ステージがないのである。演奏会に行った時我々はステージに並ぶ各楽器の響かせる音を聴くので、その音は当然、会場のムードのなかできこえてくる。
いい演奏者ほど、音そのもののほかに独特のムードを聴かせる。
それが演奏である。
ところがモニターは、楽器が鳴れば当然演奏者のキャラクターはその音ににじんでいるというまことに理論的には正し立場で音を捉えるばかりだ。――結果、演奏者の肉体は消え、楽器そのものが勝手に音を出すような面妖な印象をぼくらに与えかねない。
つまりメロディは聴こえてくるのにステージがない。
レコード音楽を家庭で聴く時、音の歪みのない再生を追及するあまり、しばしば無機的な音しか聴えてこないのはこの肉体を忘れるからなので、少なくとも私は、そういうステージを持たぬ音をいいとは思わない。
そしておもしいことに、肉体が消えていくほど装置そのものはハイファイ的に、つまりいい装置のように思えてくる。
この危険な倒錯を、どこで食い止めるかで音楽愛好家と音キチの区別はつくと私は思ってきた。
さぞや菅野さん、堪えたでしょうね。
こういうことを言える、言ってくれる人がいなくなってオーディオ評論家も堕落したのでしょう。
オーディオ評論家が、お互い仲良し倶楽部のメンバーになって、他人の悪口は言わない、意見の合わない人は入れない、金を貰った製品は全部ほめる、こうなったのは五味康祐がいなくなってからではないですかね。
上杉さんもこてこてやられています。
山中さんも、「劇場用の音である。多勢に聴かせる音である。夜更けて独り、挫折感や悔いや生き難さへの憾み、愛に酬われぬ痛哭、そんなものを癒され明日への己れを鼓舞してくれる曲を聴くにふさわしい音ではないと私には思えた。人に聴かせられる音なのである。」と言われています。
瀬川さんは褒められています。
シャープになった、スピード感が出てきた、定位が良くなった、等と言って音の変化ばかりに耳が行っていますと、「鳴っているのは、音楽ではない」と菅野さんならずとも、言われそうですね。
心しなくては。
(6月19日)
面白い評論を有難うございます。
五味さんあたりは、文字通り命の糧として音楽を聴いていたので自分の感じと妥協するところがなかったのでしょうね。
菅野さんへの感想はいまで言うなら、やはり前に出てくる音でどこやらのよく聴く押し付けがましい音だったのではないでしょうか。
もう少し音場を考えたサウンドステージとホールトーンがあれば五味さんの感想も違ったものになったかもしれませんね。
*22日の例会で石田さんと会ったら、「これ使ってみてください。結構変わりますよ。」
と言って、フューズを1本いただいた。普通アンプに付いているフューズはガラス管の
なかに細い線が通っているものであるが、このフューズは何やら土の色をした管で中は
見えない。セラミックフューズとのことである。
家に戻って早速サトリアンプのフューズを取替えた。
(6月23日)
石田さん
フューズでもかなり変わりますね。低域がしっかりして芯のある音に変わりました。
リート伴奏のピアノのタッチは、カチッとしたものになりましたので、音が立ち、歌曲も音楽がダイナミックになり生き生きと聴こえます。
有難うございました。
あんな小物でもすぐ判るくらい変わるんですから参ってしまいます。
おかげさまで当方のシステムも漸次センシティブになり、このような変化でも明瞭にわかるようになりました。
先週、金曜日に上野の文化会館に行くついでに石丸電気に寄りNAXOSを少し買ってきました。(*)
以前ですとNAXOSは、なにか平板に聴こえて音の魅力を余り感じないレーベルでしたが、システムが粒立ちのいい音になったことで、音楽の雰囲気が変わって演奏が新鮮に聴こえます。
これもオーディオの楽しみでね。
変わった曲が廉価で買えるのでこれからはNAXOSも増えそうです。
* Bottesini Music for Double Bass and Piano 8.554002
* Boccherini Cello Sonatas 8.554324
* Mendelssohn Cello Sonatas Nos.1and2 8.550655
* Piazzolla Complete music for Flute and Guitar 8.554760
* Le Grand Tango 8.550785
* Ned Rorem Selected songs 8.559084
* Tchaikovsky Complete Songs 1 8.554357
* Tchaikovsky Complete Songs 3 8.555371
* Christian Sinding Songs 8.553905
* Falla Songs and piano Music 8.554498
* Poulenc Melodies(Songs) 8.553642
例会(22日)のあと皆で(10人位いたと思いますが)三田さんところに行って、井上さんのハーベスをセットしました。
その時、当方がお返ししたカウンターポイントをついでに鳴らしてみようということになり、繋ぎましたら、結構いい音で鳴って、皆、感心したものです。
ところが、山本さんが、「あっ、忘れていた。これは逆相に繋ぐんだ。そう言えば、松本さんは音が甘いと言ってましたけど正相で聴いていませんでしたか。逆相で聴くように言ってたはずですが」と、一声ありました。
そう言えば自宅でも正相で聴いていたわけで、三田さんのシステムではありますが、その後逆相にしたら音がスッと変わり、高域も伸び、定位も良く出るようになりましたので、またまた恥をかいた次第です。
正相でいい音だなと言ってた人は黙っていましたけど。
このカウンターポイント、切替スイッチは相変わらず具合が悪く、ビデオに繋いで聴きました。今田さんが、天板を外し悪そうなところにエレクトログルーブを吹きかけ、修理をしましたので取り敢えずは一件落着となりました。
カウンターポイントのプリに山水のメイン、フィリップスのCDプレイヤー、SPはハーベス、カーボン・ピースで振動を調整と、これまでコンポで音楽を楽しんでいた三田さんは、一挙にグレードアップした音に、「セットしていただいたものは何も触りません、このままにしておいてください」とすっかりご満悦でした。
ところが先ほど脇田さんから、
「昨日はお疲れ様でした。勉強になりました。ところが今夕三田さんからテレ。また、鳴らない、SOS。駆けつけると、やはり駄目。カウンターポイントをはずし、SPの極性―繋ぎ直し。まったりしてますが、これはこれで聴きやすい音になりました。直しながら、松本さんが苦労している顔を思い浮かべて苦笑い」
とメールがありました。
(6月24日)
松本さん
フューズ、効いて良かったです。普通のフューズでも音は変わるのですが、あれはちょっと特別で効果が大きいのでこちらも驚いています。
情報量が増えて中低域が充実してくるので、松本さんには合うだろうと思っていました。他の機器であのタイプのヒューズが使えるところがあればお知らせください。
またの機会にお持ちします。
カウンターポイントの逆相というのは絶対位相ですか?
切替SWは見えなかったように思うのですが、左右逆?
まあ、ともかくいい音を聴き逃しましたね。
選択が必要なければダイレクトで配線してしまう手もありますが、SWは交換しかないようですね。
(6月24日)
石田さん
機器のフューズを調べて見ましたら、トランスポート、DAC,メインアンプが同形のもののようです。
トランスポートは2.5A、DACは4A、です。
メインアンプも同じ形で125Vの7Aとなっていますが、使われているフューズはガラス管のなかに電線1本のスタイルと違って、その電線の代わりにコイルが巻かれておりその先に金属片が付いているような特殊なものです。それが左右のチャンネル毎に1個、計2個ついています。7Aだからこのような形をしているのか、特殊なフューズなのか、当方の知識ではわかりません。
しかし、フューズでこれだけ音が変わるとやれるものは全部やりたくなっていまいますね。
カウンターポイントの位相については、言われてわかったのですが、天板に小さい英字で逆相にすべしと書かれていました。
しかし、フェーズSWがある訳ではありませんのでスピーカ−ケーブルで逆相にしました。
JBLのスピーカーは概ね逆相になっていますが、米国ではスピーカーに合わせて逆相になっている機器が結構あるということでしょうかね。
ちなみにタンノイも逆相になっているのがあるようですね。
当方が、以前使っていたJBL4343も逆相で、最初は逆相になっているのがわからなかったのですが、マーラーを聴いていてトランペットだかの位置が変な感じでしたので、それで気がついた次第です。
(6月27日)
松本さん
フューズの件ですが、トランスポートは3AでOK、DACも3Aでいけるかもしれませんね。メインアンプの方は、5Aのものが来月くらいには入るのでそれが使えるかもしれません。
今お使いのメインのフューズはスローブロータイプというもので、電源投入時の瞬間的な大電流にも切れないものです。この前のフューズも一応スローブローなのでいけるかもしれません。駄目でもヒューズが切れてしまうだけです。
(6月29日)
石田さん
遠いところいつもすみませんですね。今日は有難うございました。
例のフューズをトランスポートとDACに付けると、低域にキレのいい力感が強まり音の密度が深まります。次にハイエンドホースの電源ケーブルに付けかえるとノイズレベルが一段と下がって透明感が一層増します。
不思議ですね。
本当に音が変化していく過程がよくわかり、オーディオの楽しみを味わせていただきました。
しかし、お帰りになった後で、それではゆっくり聴くかと腰を落着けて耳を澄ませましたら、何となく違和感があります。スピーカーに近づいてみますと微かにハムノイズが出ています。
それからは、また、綺麗にセットしたシステムをやり直しとばかりに、1台づつアンプを取り出しケーブルを付けたり外したりと調べ直しでした。
どうやらプリからとダイナベクターの共振かららしいとわかりました。
ダイナベクターは、天板がやわなせいで共振するのがわかっていましたので、これはポイントにカーボン・ピースを置き解決。
買った当初は、原因がわからず悩んでいましたが、ある時天板のほぼ真ん中を指で押さえたところすっと止まったので共振していることがわかり、その後はそこにカーボンを置き、鳴きを止めています。
ケーブル交換の時このカーボンが動いたためポイントがずれて共振が出たようです。
正直ですね。ポイントがずれるとたちまち出てきます
プリの方は、結局、アクロテックの電源ケーブルが原因のようで、付属ケーブルに付け替えましたら止まりました。
昨日まで何ともなかったのが、何でそうなるのか訳わかりませんが、それはともかくと、アクロテックのコンセントをバラシ、チェックの上、緩んでいるところを締め直し、再度繋ぎなおしてみました。しかし、情けないことにハムは止まりません。
仕方なく付属ケーブルで聴いていますが、みすみす音の良いケーブルがありながら良くない方のケーブルで聴くのですから、精神衛生上良くないですよね。
今度持って行きますので見ていただけませんか。
楽しみも多いですが、苦労も多いですね。
(7月2日)
石田さん
帰って来てアンプの電源を入れ、着替えて、ゆっくりしようとCDをセットしましたけど、音が出ません。プリのフューズ(1A)が切れていました。
フューズに色がついていますので切れた状態はわかりませんが、元のガラス管の1Aに付け替えましたら音が出ましたので、切れたものと思います。
昨夜オフにする時までは何ともなかったので、多分今日オンした時に切れたのでしょう。
しかし、あれだけの効果を味わってしまうと元のフューズに戻れませんですね。
お手数ばかりおかけして誠に申し訳ありませんが、例のフューズがございましたら今度お会いする時にお持ちいただけないでしょうか。
以前、1Aでなく1.5Aを付けておいた方がいいのではとお話があったような記憶がありますが、この点は如何なのでしょうか。
それからこのようにラッシュカレントが大きいのであればオフにしないでつけっぱなしの方がいいのでしょうか。つけっぱなしでも特段熱くなるようなこともないようですので。
*このハムとフューズ切れの件は、その後石田さんと会って、次のような話を聴き、当方の知識不足からのものということがまたも露呈。
「ハムが出ているということですが、メインの電源ケーブルをハイエンドホースに換えた時、プリの電源ケーブルのコンセントタブをメインと同じところではなく他のタブに換えていませんか。これまでアースをとっていなかったメインアンプにアースをとりましたので、同じくアースをとったプリアンプを別のコンセントタブからとりますとループが生じてノイズを出すことがあります。メインアンプが最初からアースをとるような仕様のものですとそのようなことはあまりありませんが、今回は簡易型ですからその可能性があります。プリ、メインともに同じタブから電源をとってみてください。付属ケーブルはアースが3ピンではなく別途にとる仕様になっていますので、結果、たまたまアースをとっていないのでノイズが出なかったものと思います。アクロテックもアースを外すとノイズは消えると思います。」
その通りにしたらノイズはぴたりとおさまった。アースも何でもとればいいと言うことではないようである。
「フューズは3Aにしましょう。壁コンで電源事情もいいので切れたのかもしれませんが、これでいいと思います。」
(7月2日)
山本さん
いろいろ面白いことがありました。
カウンターポイントSA3.1については、三田さんところで位相を反転し修正して聴きましたらよくなりましたね。
それで、「ああ、これでは折角お借りしたカウンターポイントの本当の音を聴いていなかった」と反省しきりでした。
それでこの間のこともHPの続編に書かなければと思い、スペックを調べるためSA3.1の解説が出ているステレオサウンドを引っ張り出して見てみましたら、井上卓也さんがこう書いていました。
「このアンプは、海外製品によくある位相反転型でそれを修正する機器も用意されているが、要はスピーカーの結線を変えればよい。この位相反転型は、アンプではサイテイションXXもそうであり、スピーカーではJBL、カートリッジではデッカなどに見られる」
と言うことは、当方はサイテイションXXがそうなっているのを知らず10数年間逆相で聴いていたといことであり、カウンターポイントとの組み合わせで逆相の逆相で結果正相で聴いていたと言うことになります。
だから先日お借りして知らないで結線し、それで聴いた音が正しい音であったということになります。
サイテイションXXは位相反転型アンプなどと仕様書にも書いてありませんし、ステレオサウンドのサイテイションXXの解説にも書いてありません。
カウンターポイントSA3.1の解説にほんの1行書いてあるだけなんです。
少し、頭に来てハーマンインターナショナルに問い合わせましたら、どちらと指定はしていません、気に入った方で聴いてもらえば結構ですと何とも無責任な回答でした。
その後どれくらい変わるかとスピーカーの結線を変えて聴いていますが、どうも聴き分けが出来ません。
あえて言えば正相にした方が音像は前に来て、全体として音場が狭くなるように感じます。
従って、これからどちらで聴くか迷っているところです。
(7月2日)
松本さん
大変オモシロイ話で、思わず笑ってしまいましたね。(失礼!)
オーディオの世界は、いろいろ尽きないですね。
知らないことが次から次へと出てきます。なかなかやめられません。
カウンターポイントは修理に出すことにしました。
ということで第五回は、「いろいろありましたの記」となりました。
システムのブラシアップはプリから始まり漸次電源回りの強化と進んできました。
しかし、使っていたメインアンプが位相反転型なんて知りませんでした。13年振りに正常に復したわけですが、これでいい音と信じていたんですから、お恥ずかしい!
オーディオを趣味としていますなんてこれから余り言わないようにしたいと思います。