システム・ブラシアップの契機となったことの一つが、ダイナミックオーディオでオリジナルノーチラスを聴いたことであることは、bRに記載した通りであるが、このオリジナルノーチラスに対する想いを何度となく石田さんにも話したようで、石田さんから一度ダイナミックオーディオに行き、松本さんご推奨の音を一緒に聴きませんか、と声がかかった。
何せハイエンド中のハイエンド、ケーブルだけでウン千万円のシステムである。年金生活が間近に迫っている身では、将来とも歓迎される顧客になる心配はまず無い。
そうそう気軽に行けるところではないので二人連れであれば心強いし、より冷静に聴けるかもしれないとご一緒した。
たまたま木曜日で残念ながらというか幸いだったというか、店長の川又さんはお休みであった。顔なじみみたいな顔をして聴かせてくれますかと頼んだら、どーぞどーぞと案内してくれた。
(7月4日)
松本さん
今日はちょっと残念というか安心というか複雑な心境です。
川又さんの音はシャープですが、ちょっときつい感じですね。確かに細かい音は出ていますが、長時間は聴けません。
コムリは落第。ゴールドムント(アプローグの2段重ね。これはダイナの後行った山際電気で試聴)もそれほどでもなし。
安心して自宅の音が聴けます。
*当方の感想も、この音があれほど恋焦がれた音かという印象であった。明晰過ぎるのである。生の柔らかい厚く包み込むような音触ではなく、エネルギーがシャープに出過ぎるというか、例のアリアボックスの7番のフィゲラスの声がホールトーンと一体になった柔らかい響きとしてではなくストレートに恐ろしくエネルギッシュに聴こえるのである。この旨をメールで川又さんにお礼を述べるとともに伝えた。そうしたら丁重にも川又さんから次のように返信があった。
(7月5日)
松本 様
ご来店ありがとうございました。
ただただ、私が同席できなかったことが残念です。
次回のチャンスがありましたらぜひお越し下さい。
誤解が解ければ何よりであると思いますし、その自信もございます。
これからもよろしくお願い致します。
ありがとうございました。
*
それにしてもどうしていい音に聴こえなかったのだろうか。当方一人の感想であればこちらの体調が悪かった、聴いた盤が偏っていた、などそれなりの理由が考えられるが、二人とも同じような音触に感じ、ともに良くなかったのである。
オリジナルノーチラスの調整がよくなかったのか。それも考えられない。
この日は、アドバンスド・ノーチラス・ドライブ・システムという触込みでマランツのメイン8台、プリ2台の大掛かりなもので、かってない音が聴けるとされているものである。確かに調理人の川又店長は不在であったが、店長がいないといい音にならないというものでもあるまい。
最初聴いた時は最も良く鳴るソースだけを聴いたので感激・興奮したのか、しかも、それが時間の経過とともにその感激の記憶がより美化されていったのか。
そうは思いたくない。本当に素晴らしいと思ったのである。
オーディオというものは、本当に難しい。
感性という捉えどころのないものが基準であり、また、絶対と思いたいハードも現実は気難しくてしょっちゅう音を変える。
数千万円という高価なシステムでもこのように、時として、いや、往々にしていい音を聴かせてくれない。
昨夜、これだけ鳴ればもう言うことない、これからは装置のことなど忘れて安心して聴けると大満足したものが、翌日聴くと寝ぼけて聴こえる。
多分ノーチラスも、昨日は、お金持ちのお客さんを相手に美音で蠱惑したのだろう。今日は、そうではなかったが。
次回は、ノーチラスのご機嫌の良い時に会いたいものである。
夢が壊れないためにも。
(7月8日)
石田さん
電源ケーブル、着きました。今慣らしでボリュームをあげて聴いています。
有難うございました。
(7月9日)
石田さん
昨日はケーブル有難うございました。メインに短いハイエンドホース、プリは同じ壁コンに長いハイエンドホース、トランスポートは別の壁コンに長いハイエンドホース、アクロテックはダイナベクターの低音側のマランツに繋ぎ、いざ、どんないい音になるかと耳を欹てましたら、何ともくぐもった霧がかかったような音になり、すっかり予想はずれとなりました。
エージングをしていないためかと思い、昨日はそのままの状態で慣らしヒヤリングとなりました。
今日、帰って来てあらためて聴いてみましたが、やはり駄目。
もう一度最初からやり直しと1本ずつ試していきましたら、原因はトランスポートでした。
トランスポートをハイエンドホースからオリジナルのケーブルに戻すと、プリ、メインのハイエンドホースが効いて、見通しの良い、おそらくこれが持ち味というすっきりとしたキレの良い音になります。
付帯音が付きませんし、低域もキレて締まりの良い音になり、聴感的にはもう少し量感が欲しいくらいです。
トランスポートをオリジナルのままでプリをアクロテックにしますと、量感は増しますが、付帯音があるようで、一旦ハイエンドホースを聴いてしまうと色がついているように感じます。
しかし、ハイエンドホースはプリ、メインともにキレの良い音になるのに、トランスポートになると分厚いドドッとした低音は出るのですが、声は曇り、見通しが悪く、全然様になりません。
この前お出でいただいた時もそうでしたが、アクロテックにした時と同じような印象で、すぐオリジナルに戻したことを思い出しました。
オリジナルのケーブルですからそれほど高価なものは付いていないと思いますが、アクロテックもハイエンドホースも落第です。
ここにどんなものを付ければよくなるか、また楽しみが増えました。
そんなことでトランスポート用に考えていたハイエンドホースを、変更してダイナベクターの低域側に付けました。
当たりでした。メインSP側のプリとメインをハイエンドホースにした結果、つながりが悪くなったサブSP側も、少し改善されました。
やはりサブ側もそれなりの手当てがいるようです。
しかし、電源ケーブルでこれだけ音が変わりますとアンプの評価などと言ってもどこまで信用していいか疑問になりますね。
また、つながり具合のバランスをとった結果、ダイナベクターのレベルは一段と絞ることになりました。ほんの心持と言った程度です。
(7月11日)
松本さん
DACには相性がよくないようですね。難しいものです。
こればかりは、トライアンドエラーを繰り返すしかないのでしょうか。
(7月13日)
石田さん
今日の例会では、トランスポートの材質比較の企画、興味深く楽しい時間を過ごさせていただきました。同じメカなのに台座を換えるだけであれだけ音が変化するのですから。
しかし、銅を聴いてしまいますとアルミはもう聴けません。まるで台座の音を聴いているようなものですね。
お借りした細めのハイエンドホースの電源ケーブル、早速聴いてみました。
太目のハイエンドホースに比し、感じはかなりオリジナルケーブルに近いのですが、やはり高域の伸びというか艶が及びません。ただし、低域の厚さ、どっしりとした安定感はオリジナルより格段に上です。
これを聴いたあとでは、オリジナルが細身のハイ上がりに聴こえてしまいます。
しかし、例のアリアボックスの7番では、フィゲラスの声の魅力が落ちますので、やはり取り換えるまではいかないようです。
何とか、この高域の艶が保てて締まった低域が出てくれるようになればと思うのですが、相性があるのでしょうね。
1年遅れとなりましたが、還暦祝いのシステム・ブラシアップとして、プリアンプの導入に始まりようやく電源周りの強化まで来ました。
当方のシステムもここに至り、13年の長い眠りから目が覚めたようです。
音楽も活き活きと伸びやかになり、聴く喜びがまた戻ってきました。
指南役の石田さんに感謝するところ大です。
まだまだ発展途上で、いろいろいじる楽しみはこれからも続きそうですが、だらだら、でれでれ、とすっかり長くなった本編も、今日現在まで来ましたので、この辺で終わらせていただきます。
随分大袈裟に書いたけど、何処が変わったのかなどと言われるかもしれませんが、本人は良くなった積りでいます。辛口批評、歓迎です。聴きに来てください。