オーディオのポイントはソースと部屋と装置といわれていますが、ソースはほとんどが購入で、我々には選ぶしか手がありません。部屋の方はそうおいそれと替えられるものでもないので、勢い装置の方をあれこれ吟味するのがメインになってしまいます。
しかし、それぞれが重要なことは確かで、他人の音を聞かせてもらうのも、その違った環境を含めてどんな部屋からどの様な音がするかを聞かせてもらっているところもあります。その中で感じることは、やはりリスニングルームは広さが重要なポイントではないかという点です。
部屋の広さは生活空間としての余裕はともかく、音響的に見てもその響きに表われてくるようで、同じ装置で比べたわけではないのですが、狭い場合よりも艶と奥行きのある音がしています。狭い洋間などは定在波も立ち易く、その周波数も重要な中低音にかかってしまいます。和室の場合には余分な定在波は立ちにくいのですが、その分響きも少ないので痩せて艶の無い音になりがちです。
私も今は6畳の和室で聞いているのですが、最近松本さんのお宅に何遍か伺うにつけ、ようやく自分の部屋に響きが物足りないことに気が付きました。松本さんのところはダイナベクタのスーパーステレオを加えているので広さに加え更に残響部分が乗りますが、しっかりした壁と床のお陰で音の響きと芯がよく出ているのだと思います。
音が痩せてくると奥行きも乏しくなり音に張りが無くなります。またソースによって録音状態が異なるために残響部分が少ないものは聞き難いものが出てしまいます。広い部屋での響きの良さを考えると、私の場合には何らかの欠けている残響成分の付加が効果的だろうと考えました。
しかし、基本的にはソースに無いものを加えることに抵抗もあるかと思います。何も引かない何も加えないという考えが理想的かもしれませんが、結局は装置や部屋が完璧であるはずもなく、また何を持って理想的かもわからない以上、最終的な音がどうなるかで考えなければならないと思います。
対策に引っ張り出したのは大昔のYAMAHAのDSP−1とい音場創生機です。ソースからその音があるホールなどにおかれた場合の残響成分を加えることができ、大まかなホールの種類やサイズ、細かい残響パラメータの調整・登録ができます。早速サブシステムにつないでフロントエフェクトの音をパラに出しました。以前このDSP−1を使っていたときはどうも付加部分の残響が耳について使いこなせなかった為にお蔵入りしていたのですが、今回はあまり違和感を感じません。これを使っていた数年前とは全体のグレードが上がったせいでしょうか?
ともかく残響成分のエフェクトレベルを上げてゆくと、メインの音との音離れが良くなり、音場の広がりに加え艶が出てくるようになるポイントがあります。あまり加えすぎると嫌味になりますのでこの手は控えめに使うのがコツです。クラシック系とポピュラー系は流石に最適値が異なるようですが、2〜3のプリセットでソースに合わせて簡単に選べそうです。
エフェクトを加えるとボーカルなどは非常に伸び伸びとした歌いっぷりになり、ゆったりと落ち着いて聞けるようになりました。むしろクラシック系はそれほど変化が少なく、若干広がりと奥行きが出てくるかなという感じですが、曲によってはそのスケール感が効果的な場合があります。
ともかくも残響成分の付加というのも和室などの狭い部屋では効果的なことが解りました。これがどのような部屋でも有効かどうかは解りませんが、広い部屋の方が音楽を楽しく聴ける理由の一つは、この適度な残響成分の付加ではないかと言えそうです。