AAFC

室内楽 おもしろ講座

「これからは地味な音楽”室内楽”も楽しく聴ける」

2013年6月23日
分科会資料
講師 : 高橋 敏郎


第2回  室内楽  各論  その1

ウィーン古典派の三大巨匠の室内楽     ハイドン ー モーツァルト ー ベートーヴェン

古典派時代の室内楽の背景・特長などについては 前回の総論で概ね述べたの ここでは省略します。
今回は ハイドン、モーツァルト そしてベートーヴェンという三大作曲家の代表作を映像でタップリご鑑賞頂きます。
以下 演奏曲目について簡単に概説します。

A.ハイドン 弦楽四重奏曲 第62番(77番説もあり) ハ長調「皇帝」作品76の3 (演奏時間22:50)

1797年 ハイドンは ナポレオン率いるフランスに脅かされ続けていたオーストリアを鼓舞するため愛国的感情から所謂「皇帝讃歌」(神よ、皇帝を守りたまえ)を書いた。
この讃歌を作った年、彼はこの旋律を第2楽章の変奏曲主題にした弦楽四重奏曲を作曲した。
ハイドン65歳の作曲になる本作品はウィーン古典派作品の典型といわれる彼の晩年の傑作。

後日譚。それから12年後の1809年5月、ナポレオンはウィーンに迫り、13日ウィーンへ入城。
ハイドン 同月26日から昏睡状態となり、31日 永眠。
「皇帝讃歌」は のちにオーストリア国歌に制定され、さらにドイツ国歌となった。ヒットラーがオーストリアを制圧したとき 歌詞が変更されて「世界に冠たるドイツ」と唱われたのは知られるところ。

第1楽章 アレグロ 典型的なソナタ形式 (5:50)
第2楽章 ポコ・アダージョ・カンタービレ 皇帝讃歌に基づく変奏曲形式 (8:02)
第3楽章 メヌエット 三部形式 (4:40)
第4楽章 フィナーレ プレスト  ソナタ形式 (4:18)

演奏
アマデウス四重奏団 (1980録音)DVD録音 (ICA CLASSICS)
同奏団は1947年英国で設立。87年、ヴィオラ奏者のシドロフの死をもって解散。大戦後設立された奏団ではジュリアード(米)、スメタナ(チェコ)とともに最高のカルテットとして君臨した。

 

B. モーツァルト              クラリネット五重奏曲  イ長調     K.581   (演奏時間 36:34)
この作品は最晩年の名曲クラリネット協奏曲とともにザルツブルグ時代以来の親友である名クラリネット
奏者アントン・シュタットラーのために死の2年前に作られた傑作。もっとも常に借金づけだった晩年の
モーツアァルトは度々彼に金策も依頼していたようだ。
この作品をアンリー・ゲオンが「死の五重奏曲」と呼んだように 既にこの頃からモーツァルトは自身の死が
近々訪れるであろうことを予期しており その死を直視しながら書き上げられたといわれる。 

第1楽章 アレグロ ソナタ形式 (9:52)
第2楽章 ラルゲット 三部形式 (6:47)
第3楽章 メヌエット 2つのトリオをもつ三部形式 (7:21)
第4楽章 アレグレット 変奏曲形式 (12:26)

演奏
ザビーネ・マイヤー(クラリネット)&ハーゲン四重奏団(2000録音)DVD録音 (UNITEL CLASSICA)

クラリネットのマイヤーは、1960年ドイツ生まれ。83年、ベルリンPOに正式入団するが その入団をめぐってカラヤンと団員の確執が深刻化したため、自主的に退団。以降 ソリストとして活躍する。
ハーゲン四重奏団は1981年創設されたオーストリアの奏団。現在最も注目されている実力派四重奏団の最右翼。

 

C. ベートーヴェン        弦楽四重奏曲 第15番   イ短調  作品132   (演奏時間 45:59)

先年物故された文化勲章受章者、吉田秀和氏にとって ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲は「究極の音楽」且つ「絶対の音楽」であり さらには「音楽になった祈り」とも表現される。
中でも15番にはそんな感じがする。第3楽章の冒頭に作曲者自身によって記されている「病から回復した者の神に対する聖なる感謝の歌」があまりに有名。この楽章は「感謝の歌」の主題などによる一種の変奏曲形式ともいえる。

第1楽章 アッサイ・マエストーソ(極めて荘重に)序奏部付き自由なソナタ形式 (10:43)
第2楽章 アレグロ・マ・ノン・タント(速く、しかしあまりはげしくなく)複合三部形式(9:33)
第3楽章 モルト・アダージォ(感謝の歌)変奏曲形式 (16:38)
本曲の中心的存在。最初のテーマは深い内省をたたえたコラール(感謝の歌)に対し作曲者が「新しき力」と名付けた溌剌とした第2のテーマが絡み合う変奏曲形式と考えられる。
第4楽章 アラ・マルチア・アッサイ・ヴィヴァーチェ(行進曲風に、きわめて溌剌と)二部形式(2:05)
この極めて短い楽章は次の第5楽章への序奏とも解釈され、その場合 この作品は 本来の4楽章構成ともいえる。
第5楽章 アレグロ・アパショナート(熱情的に、速く)ロンド・ソナタ形式 (7:00)

演奏
アルバン・ベルグ四重奏団 (1989録音)DVD録音 (EMI CLASSICS)  

同奏団は1970年創設のオーストリアの奏団。現役では古典から現代に至るレパートリーにおいてアメリカのジュリアード奏団とともに世界最高の四重奏団といわれる。

 以  上