デ・ヴィートの共演者には大物が多いのも特徴です。
今回ご紹介するシュポーアの作品では名手ユーディ・メニューインが第2ヴァイオリンを、ブラームスのソナタでは巨匠エドウィン・フィッシャーがピアノ伴奏を受け持っています。
これにはデ・ヴィートの夫でありEMIの役員でもあるビッグネルのプロデュースによることはいうまでもありませんが、普通では考えられない組み合わせでしょう。
またブラームスの協奏曲では、11年もの研鑽を積み1942年35歳で、満を持してローマにデビューした時の曲で、一躍イタリアヴァイオリン界の女王として楽壇の寵児となりました。
この曲の録音には、ベイヌム、フリッチャイ、シュヴァルツ等の指揮によるものもありますが、今回はフルトヴェングラーの指揮でお聞き下さい。
デ・ヴィートの愛器
1952年までは、ガリアーノの「エックス・カルマン・ロネイ」(1762年作)を、1953年以降は、クレモナ産の名器「トスカーナ」(1760年ストラディバリ作)を使用。
「トスカーナ」はメディチ家のトスカーナ大公コージ3世の為に作られたもので、同家廃絶後、競売にかけられ、幾度か転売され、ムッソリーニがデ・ヴィートの為に購入しようとしたが、実現しなかった。
第2次大戦後、イタリア政府が聖チェチーリア音楽院の為に12,000ポンドで購入して、同院へ貸与した為、1944年37歳にして同院のヴァイオリン科終身教授に任命されていたデ・ヴィートが使用するものとなった。(Wikipediaより)
(LP使用機器) プレーヤー: DENON DP-59L
カートリッジ: audio-technica AT33MONO
シュポーア: (独 Louis Spohr 1789-1859 70y)
(本名ルートヴィッヒ)ヴァイオリンのヴィルトゥオーソとして、また作曲家,指揮者、教育者としても有名である。ヴァイオリン協奏曲、歌劇、交響曲、室内楽等多数作曲し、メンデルスゾーン等の新しい世代に大きな影響を及ぼした。また、ヴァイオリンの「顎あて」の発明者。指揮棒を初めて使ったり、「ヴァイオリン教本」を書いたことでも知られている。
ヴァイオリン協奏曲第8番イ短調、クラリネット協奏曲第4番ホ短調、ピアノ五重奏曲ハ短調、ソナタ・コンチェルタンテ等が良く演奏される。
(CD EMI全集mono)
アレグロ ト短調 3/4拍子 (二重奏曲ト短調作品67-3より) (5:55)
ラルゲット 変ロ長調 6/8拍子 (二重奏曲ニ長調作品67-2より) (4:38)
ロンド(Vivace) ニ長調 2/4拍子 (二重奏曲ニ長調作品67-2より) (5:21)
使用Vn:「トスカーナ」
(2nd ヴァイオリン) ユーディ・メニューイン (米 1916-1999 83y)
(録音:1955・12 デ・ヴィート 48歳、 メニューイン 39歳)
ブラームス : (1833~1897 64y)
ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 作品78 「雨の歌」 (LP TESTAMENT mono)
ブラームスはヴァイオリン・ソナタを3曲遺しているが、どれもベートーヴェン以降のこの分野での傑作となっている。第1番は1879年、ブラームス46歳、円熟期の作品である。(因みに第2番は1886年、第3番は1888年)。オーストリアのヴェルター湖畔にあるベルチャッハで作曲された。
前年の1878年にはヴァイオリン協奏曲ニ長調が同じベルチャッハで作曲されており、姉妹曲といってよく、共に親しみやすく叙情的である。
「雨の歌」ソナタと呼ばれるのは、第3楽章の冒頭の主題に数年前に作曲された歌曲《雨の歌 op.59-3》を利用しているためである。この旋律は第1楽章や第2楽章の主題動機とも関連しており、全曲の有機的統一が図られている。
初演 1879年夏(vn)ヨアヒム(p)ブラームス
デ・ヴィートとフィッシャーの演奏は、シェリング・ルービンシュタイン(1960年)の演奏と双璧を成す名演といわれるが、デ・ヴィートの優しく包み込むような演奏に、この曲特有のメランコリックな叙情性を味わって下さい。
第1楽章 Vivace ma non troppo ト長調 6/4拍子 ソナタ形式 (10:36)
第2楽章 Adagio 変ホ長調 2/4拍子 3部形式 (8:13)
第3楽章 Allegro molto moderato ト短調 4/4拍子 ロンド形式 (9:05)
(程よく快速に) (ABACA+coda)
使用Vn: 「トスカーナ」
(ピアノ) エドウィン・フィッシャー (スイス 1886-1960 74y)
(録音:1954・3 デ・ヴィート 46歳、 フィッシャー68歳)
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品 77 (LP ROCOCO monoライブ)
ブラームスの友人の一人にハンガリーが生んだ大ヴァイオリニスト、ヨアヒム(1831-1907)がいた。この友人の為にヴァイオリン協奏曲を書くことは、ブラームスの長年の宿望で、1878年45歳になってようやくその望みを遂げたのがこの曲である。独奏部にはヨアヒムの意見も取り入れられ、最初はピアノ協奏曲第2番のような4楽章の曲にするはずだったが、ヨアヒムの助言を入れて伝統的な3楽章のものに変更された。
第1楽章 Allegro non troppo (ほどほどの速さで) ニ長調 (23:08)
第2楽章 Adagio ヘ長調 (9:53)
第3楽章 Allegro giocoso, ma non troppo vivace ニ長調 (8:00)
(速く楽しげに、しかしあまり早くならないように)
カデンツァ(第1楽章): ヨアヒム作
使用Vn: ガリアーノの「エックス・カルマン・ロネイ」
(指揮) ヴィルヘルム・フルトヴェングラー (独 1886-1954 68y)
(管弦楽) トリノ・イタリア放送管弦楽団
(録音:1952・3 デ・ヴィート44歳 フルトヴェングラー66歳)
トリノ・イタリア放送局・録音
以上