ヌヴーの芸風
(英国グラモフォンの幹部ウオルター・レッグ氏評より)
「ヌヴーは殊の外新鮮な感覚、高雅な抒情性と完璧な技巧の持ち主である。とりわけ、法外に異常な活力と曲への超人的な心技の凝集性が目立つ。このように言語道断な激しい情熱の美を、かってヴァイオリンの上に見出したことは勿論、想像したことすらない。それは白熱し切った恐ろしく原始的なものだが、すべての制約を破ろうとする土壇場に来ると、必ず強靭な意志と名徹な知性の支配を受けて見事にたわめられる。
容貌も非凡である。
尤も、平常は在来の意味では美しくない。軽度の出目といい、甲状腺の肥大した喉といい、バセドー氏病患者の兆候がある。
だがヴァイオリンを取り上げた途端に荒々しく恍惚とした麗しさに豹変するし、演奏中は張り切った黒豹が獲物を狙って飛びかかろうとするかのように楽器の上ですくみとおす。なんという偉大な個性であろう!」
演奏曲目
1. ドビュッシー
ヴァイオリン・ソナタ ト短調 (ドビュッシー最晩年の大作) (12:49)
ⅰ Allegro vivo ト短調 3/4拍子 三部形式 (4:38)
ⅱ Intermede: Fantasque a leger (幻想的に軽やかに) ト長調 2/4拍子 (4:19)
ⅲ Finale: Tres anime (極めて生き生きと) ト長調 3/8拍子 自由なロンド形式 (3:52)
1948.3 (28歳) (p) ジャン・ヌヴー ロンドン・アビー・ロード・スタジオ録音
2.ショウソン
詩曲 より ヌヴー唯一の映像 (03:04)
1946年(27歳) プラハ 指揮:シャルル・ミュンシュ (ワーナー・ビジョン製作「The Art of Violin」より)
コメント: イダ・ヘンデル(1924-)、イヴリー・ギトリス(1922-)、ヒラリー・ハーン(1979-)
3.ショウソン
詩曲 op.25 (16:42)
1949・1 (29歳) 指揮:シャルル・ミュンシュ フィルハーモニック交響楽団NY
4.ラヴェル
ツィガーヌ (10:30)
ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクール(1935年)優勝時の自由曲として演奏。
1949・1 (29歳) 指揮:シャルル・ミュンシュ フィルハーモニック交響楽団NY
5.ベートーヴェン
ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61 (LP 仏Disques ARTOISにて演奏) (44:06)
1949・9・25 (30歳) 指揮:ハンス・ロスバウド 南西ドイツ放送管弦楽団 (バーデンバーデン)
ヌヴー最後の録音。事故死のほぼ1か月前。
ⅰ Allegro ma non troppo (cad. Kreisler) (23:57)
ⅱ Larghetto (09:57)
ⅲ Londo (cad. Kreisler) (10:18)
死の1年前という短い期間に奇跡的に残されたライブ録音 1948.4-1949.9 (28~30歳) 一覧
Brahms |
ヴァイオリン協奏曲 |
ニ長調 |
op.77 |
イッセルシュテット |
北ドイツ放送so |
1948.5.3 |
Brahms |
ヴァイオリン協奏曲 |
ニ長調 |
op.77 |
デゾルミエール |
フランス国立o |
1948.9.25 |
Chausson |
詩曲 |
|
op.25 |
ミュンシュ
|
フィルハーモニックsoNY |
1949.1.2 |
Ravel |
ツィガーヌ |
|
|
ミュンシュ |
フィルハーモニックsoNY |
1948.12 |
Beethoven |
ヴァイオリン協奏曲 |
ニ長調 |
op.61 |
オッテルロー |
ラジオFihオーケストラ |
1949.5.1 |
Brahms |
ヴァイオリン協奏曲 |
ニ長調 |
op.77 |
ドラティ |
ハーグ・レジデンティo |
1949.6.10 |
Brahms |
ヴァイオリン・ソナタ |
第3番 |
|
ジャン・ヌヴー(p) |
|
1949.9.21 |
Beethoven |
ヴァイオリン協奏曲 |
ニ長調 |
op.61 |
ロスバウド |
南西ドイツ放送o |
1949.9.25 |
以上