Johanna Martzy(1924.10-1979.8 54y)
ドイツ・グラモフォンでいくつかの録音を行った頃、マルツィはEMIの最も影響力あるプロデューサー、ウォルター・レッグの目に留まった。
最初の録音は1954年2月にロンドンのキングスウェイ・ホールで行われ、パウル・クレツキ指揮、フィルハーモニア管弦楽団の伴奏でブラームスの協奏曲を演奏した。3月には更なる録音が予定され、バッハの無伴奏ソナタ第1番がアビーロード・スタジオで、6月にはモーツァルトの協奏曲第3番とメンデルスゾーンのホ短調協奏曲がキングスウェイ・ホールで録音された。
指揮はまだ30歳だったヴォルフガング・サバリッシュが務め、フィルハーモニア管弦楽団が伴奏した。しかしこの演奏は当時発売には至らなかった。(今もEMI全集には含まれず)
この間、マルツィはバッハの無伴奏の録音を続け、約1年を掛けて1955年4月にこの比類なき全集を完成させた。
1955年11月、ベルリンのエレクトローラ・スタジオでアントニエッティとシューベルトのヴァイオリンとピアノの為の作品全集を録音した。1955年のクリスマス直前にクレツキ指揮のフィルハーモニア管とキングスウェイでメンデルスゾーンを再録音。ベートーヴェンの2つのロマンスも収録された。これがマルツィの公式レコーディングの最後となった。気まぐれで独裁的で気難しいレッグが、単にマルツィに興味を失ったからであった。
しかし幸いにも、放送録音はかなり残されており、ベートヴェンの協奏曲やモーツァルト、ベートーヴェン、
ブラームス、フランク、ラヴェルのソナタなど彼女のレパートリーの中で重要度の高いものがリリースされている。
1.J.S.バッハ (1685-1750 66y)
無伴奏ヴァイオリンの為のソナタ・パルティ―タ BWV1001~6
(CD TESTAMENT mono)・・(29:30)
ソナタ 第1番 ト短調から 第1曲 アダージョ…………………… (5:00)
ソナタ 第2番 イ短調から 第4曲 アレグロ・アッサイ…………… (4:10)
パルティータ 第2番 ニ短調から 第5曲 シャコンヌ…………………… (15:18)
パルティータ 第3番 ホ長調から 第3曲 ガヴォット …………………… (3:07)
同上 第6曲 ジーク…………………………(1:45)
録音:1954年3月 (29歳)~1955年4月(30歳)
2.シューベルト (1797-1828 31y)
華麗なるロンド ロ短調 (op.70) D.895 (LP ANGEL mono)・・・・・・・ (16:24)
1826年 シューベルト29歳の時、技巧的なパッセージを華やかに織り込んだ作品
序奏 Andante 3/4
主部 Allegro 2/2 (華麗なテーマと抒情的な挿入句が美しい.ロンド形式 A-B-A-C-A)
コーダ piu mosso (今までより速く)
ピアノ:ジャン・アントニエッティ
録音:1955年11月 (31歳)
3.モーツァルト (1756-1791 35y )
ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調 K.216 (LP TESTAMENT mono) ・・・・・ (23:58)
1775年9月 モーツアルト19歳の時の作品。本曲を含めモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全5曲は、1775年2月から12月までの間にザルツブルグで作曲されたので「ザルツブルグ協奏曲」とも呼ばれる。
第3楽章フィナーレでは、中間にト短調のアンダンテとト長調のアレグレットの2つのエピソードが挿入されている。このアレグレット主題には「シュトラスブルガー」(シュトラスブルグっ子)というドイツ民謡が取り込まれている。その為、第3番には「シュトラスブルク協奏曲」の異名もある。
第1楽章 Allegro 4/4 (9:30)
第2楽章 Adagio ニ長調 4/4 (7:53)
第3楽章 Rondo: Allegro 3/8 (6:35)
指揮:ヴォルフガング・サヴァリッシュ(30歳)
フィルハーモニア管弦楽団
録音:1954年6月 (29歳)
4.シューベルト
(大)幻 想 曲 ハ長調 (op.159) D.934 (LP ANGEL mono) ・・・・・・・・(28:21)
1827年 シューベルト30歳、死の11か月前の作品。ボヘミヤのヴァイオリニスト、ヨーゼフ・
スラヴィーク及びボヘミヤのピアニスト カール・ボクレットの為に書かれたため、ボヘミヤ的な色彩と、巨匠的なパッセージが目立つ。曲は3部から構成されているが、全曲途切れずに演奏される。
第1部 序奏部 Andante molto ハ長調 6/8 の静かな部分と
主部 Allegretto イ短調 2/4 ボヘミヤ風の情熱的部分から成る。
(自由なソナタ形式)
第2部 主題 Andantino 変イ長調 3/4
旋律の美しい自作歌曲「わたくしの挨拶」D.741から と
4つの変奏曲 Allegro から成る。 (自由なソナタ形式)
第3部 第1部序奏部の変奏 Andante molto ハ長調 6/8
第1部主部の変奏 Allegro vivace ハ長調 2/2 行進曲風 が中断し、
第2部の変奏 Allegretto 変イ長調 3/4 が挿入され、
終結部 Presto ハ長調 2/2 中断された主部の続行。
ピアノ:ジャン・アントニエッティ
録音:1955年11月 (31歳)
《参考》シューベルトが作曲したヴァイオリン曲 のすべて
室内楽
1、ヴァイオリン管弦楽の為の小協奏曲(全2楽章) D.345 1816年 19歳 (習作的作品)
2、ヴァイオリンと弦楽合奏のためのロンド イ長調 D.438 1816年 19歳 (習作的作品)
Vn & P
1、ヴァイオリン・ソナチネ 第1番 ニ長調 D,384 1816年 19歳
2、ヴァイオリン・ソナチネ 第2番 イ短調 D,385 1816年 19歳
3、ヴァイオリン・ソナチネ 第3番 ト短調 D,408 1816年 19歳
4、ヴァイオリン・ソナタ イ長調 D,574 1817年 20歳
5、華麗なるロンド ロ短調 D,895 1826年 29歳
6、幻想曲 ハ長調 D,934 1827年 30歳
以上