本日は我孫子のジャズピアニストと題して西直樹さんと外山安樹子さんのCDを取り上げます。
お二人とも我孫子市にお住まいで実力、人気ともにあるピアニストという共通点があります。ただ演奏などは対照的であります。
西さんがスタンダードを中心に演奏をされるのに対して(かつては自作曲も演奏されていました)、外山さんは自作の曲を中心に演奏されています。
そのほかにも演奏スタイルや出す音の違いなど、今日は作品を聴いてそれらを感じ取っていただけたらと思います。
<西直樹>
西さんは17歳の時に広島で演奏活動をしていたところを猪俣猛、前田憲男に見出されて18歳で上京しました。(1976年4月)
録音物としては以下の作品を発表されています。
1980年2月19日 1stアルバム「My Little Suede Shoe」を発表。その年のスイングジャーナル誌最優秀録音賞を受賞する
1980年7月8日 2ndアルバム「Giant From West」
1981年2月3日 3rdアルバム「Straight No Chaser」
1981年5月19日 4thアルバム「Day By Day」
1982年7月13日 5thアルバム「Have You Met Miss Jones」
1985年1月 6thアルバム「Laid Back Mind」
1987年1月15日 7thアルバム「アランフェス協奏曲」
1998年9月21日 8thアルバム「People」
2002年1月4日 9thアルバム「Jazzy Breeze」
2015年10月 1stDVD 「西 直樹Trio」
2016年5月 10thアルバム「My Ship」を発表予定。
その他数々のイベントやコンサートへの出演をされています。
2009年から2010年にかけて原 信夫と#&b解散ファイナルツアーのピアニストとして活躍されました。
詳しい経歴は西直樹さんがご自身のホームページにてかなり詳細にまとめていますので、そちらで確認していただきたいと思います。
http://www.ne.jp/asahi/jazzpiano/naoq/jiko.htm
数多くの作品があり縛りを設けないと選ぶのが大変なため、今日は最初の2枚のアルバムと現時点ではトリオ形式で純然たるジャズのアルバムとして最新作となる1998年の「People」から選びます。
アルバム「My Little Suede Shoe」より
西直樹(p)山口和与(b)猪俣猛(dr)菅野沖彦(録音)
「Take The “A” Train」
1stアルバム「My Little Suede Shoe」の最後に収められている曲です。
テンポの速い曲を颯爽と演奏するスタイルは西さんの特徴の一つだと思います。
ゆったりとした列車の旅を表現することが多いこの曲を高速でよどみなく走る列車にしてしまうところが西さんらしいところでしょうか。
「My Little Suede Shoe」
アルバムのタイトルトラック。チャーリー・パーカー作曲による曲を明るく軽快に演奏しています。この演奏も西さんらしさが出ている演奏だと思います。
アルバム「A Giant From West」より
西直樹(p)河上修(b)マイク・レズニコフ(dr)菅野沖彦(録音)
「Little Song」
西直樹さん作曲の小品。こうしたバラードを情感たっぷりに弾くところも西さんの持ち味だと思います。自身の作ったメロディーの魅力をあますところなく表現しています。
「On Green Dolphin Street」
アルバム最後に収められている定番のスタンダードナンバー。このような有名曲にて曲の魅力を再発見させるようなアレンジ、演奏をする西さんのスタイルが、もうすでにこの頃から発揮されていると感じられる演奏です。
アルバム「PEOPLE」より
西直樹(p), 水上信幸(b), 平井景(ds), 菅原裕紀(perc)
「I Love You Porgy」
私はガーシュインのこの曲が大好きです。昨年、我がクラブの20周年記念祝賀会で西さんがこの曲を演奏した時は本当にうれしかったです。
西さんはこの曲をよく取り上げるようですので、やはりお好きなのではないでしょうか。
昨年発売されたDVDにもこの曲が収録されています。
YoutubeでDVDのサンプルとしてこの曲が見られますので、ぜひご覧になってください。
「Billy Boy」
1stアルバムにも収録されている曲です。比較するとこちらの演奏の方がドライブ感があって、思わずのめり込んでしまいます。さまざまな演奏経験がこの演奏に集約されている、そんな印象を受ける演奏です。
<外山安樹子>
(以下のプロフィールはご本人のホームページから抜粋編集)
札幌市生まれ。6歳よりヤマハネム音楽院にて作曲、演奏法、理論等を学ぶ。自作の曲やクラシックで国内外のコンサートに出演。日本ピアノ教育連盟オーディション(テーマ:ベートーベン)小学生の部で全国大会入賞。自作の曲やクラシックで国内外のコンサートに出演。
91年には大阪・シンフォニーホールにて大阪フィルハーモニー管弦楽団と共演 。
93年にはフランスでの国境なき医師団のチャリティーコンサートに参加。サル・プレイエルにて、シルヴァン・カンブルラン指揮・フランス国立放送管弦楽団と共演し、その模様がテレビ朝日系「ジュニアオリジナルコンサート」にて放映される。帰国後、札幌交響楽団と共演。
(以上は自作のピアノコンチェルトを演奏)
高校1年まで作曲活動を続けるが、その後はピアノ漬けの生活に飽きて(というと聞こえはいいけど本当は練習ぎらいだったため)勉強へ転向。96年早稲田大学法学部入学のため上京。音楽とは全く縁のない4年間を過ごす。
司法試験に挑戦し始めながら、自分らしさのない勉強だけの生活が苦しくなり、 ある日ふと「JAZZ」を始めよう!と思い立ち吉田ピアノ教室の門戸を叩く。
03年秋頃からジャズピアニストとしても都内や茨城県、千葉県を中心にライブ活動をはじめる。
現在は自己のトリオのほか、鈴木ウータン正夫グループをはじめ、数々のボーカリストの歌伴などで活躍中。
2007年1月 全編オリジナルの自主制作CD「Songs of Lilac」
2007年9月 YPMレーベルからファーストアルバム『Lilac Songbook』
2009年9月 トリオでのセカンドアルバム『All is in the Sky』
2011年7月 トリオでの3rdアルバム『Ambition』
2013年11月 4thアルバム『Nobody Goes Away』
2016年4月 5thアルバム『Tres Trick』
それぞれの収録曲が『ジャズ批評』誌にてジャズメロディ賞受賞。
2010年1月に出版された「W100ピアニスト」にて日本の女性ピアニスト100人に選ばれて掲載される。
外山さんもたくさん作品を発表されています。これまた選ぶのは難儀なので新しい方の2枚のアルバムに絞ってチョイスしました。
アルバム「Nobody Goes Away」より
「誰もいなくならない」
アルバムのタイトルトラックです。昨年、我孫子で行われたINORIコンサートに出演された際にこの曲をソロで演奏されました。つらい時期に出会った谷川俊太郎の「さよならは仮の言葉」という一篇の詩に感銘を受け、同感し作られたのがこのアルバムだそうです。
誰もいなくならないとぼくは思う
死んだ祖父はぼくの肩に生えたつばさ
時間を超えたどこかへぼくを連れて行く
枯れた花々が残した種子といっしょに
谷川俊太郎
「Flame in Flame」
(以下ご本人による楽曲解説です)
これから何かが起こりそうな、ワクワクした気持ち…例えて言えば大きな絵の額縁の中からまた額縁が出てきて次は何が出てくるのだろう、というような…。
そして「ワクワク=枠=Flame」という風にシャレにもなっています。
アルバム「Nobody Goes Away」より
「Spear or Shield」
ニューアルバムのオープニングを飾るナンバー。特徴的なテーマがピアノとベースのユニゾンで始まる印象に残る曲。
(これ以降は全てご本人による楽曲解説です)
「繊細さ」と「力強さ」、「複雑さ」と「単純さ」。音楽で言えば「即興性」と「構築性」…世の中の存在は「矛」か「盾」か、どちらか1つの言葉では表せない。相反する2面性のバランスで存在しているともいえるし、もっといろんな面から見ると全く別なものに見えたりする…そんな事を思いながらこの曲ができました。
「はじまりの秋」
小1から高校でピアノを一度止めるまでクラシックを習っていた恩師がいます。暫く不義理をしていましたが、ジャズという形でピアノを再開した私のライブにある日急に訪ねてきてくださり、先日は先生の還暦の会で演奏するという機会まで与えていただきました。その時の先生の言葉「私はこれから乗馬と英会話と…介護の資格も取って、海外旅行バンバンするの」さ、さすが先生、エネルギッシュ!還暦を過ぎると「人生の秋」と言われるものですが先生にとっては「はじまりの秋」なんだなあ、と思い、先生への感謝の気持ちからメロディーが浮かびました。
「Tres Trick(TONGARI)」
三人で演奏している中で、私はいつも伸び伸びと好きなことをやらせてもらっています。そして常に他の二人にも自由であってほしい、やりたいことをこのトリオで思いっきりやって欲しい、と思いながら活動しています。そんな、それぞれ3人「Tres」が、個性を発揮して曲が変化し、「Trick」のように様々な表情を見せ、新たな境地へたどり着く…そんな曲を作りたくて挑戦しました。この曲を聴いたある店のマスターが「外山トリオって実はトンガってるんだね」という感想を漏らしてそこから通称が「トンガリ」になってしまったので、題名にもカッコしてつけました。
「To the End of the Earth」
CDを作るようになって3人で色々な土地へツアーに行きました。ほとんど車で3人交代で運転していきます。交代だとどんな距離でもあっという間。このまま地球の果てまでも、どこまでも3人なら行けるんじゃないかな、とふと思って作りました。
外山安樹子トリオはアルバム『All is in the Sky』から外山安樹子(p)、関口宗之(b)、秋葉正樹(dr)という不動のメンバーで活動されています。
最新アルバムの解説は我がクラブ制作のCDでも解説を書いていただいた瀬川昌久氏です。
先日、渋谷のJZ Bratにて行われたCD発売記念ライブを瀬川氏がご覧になって「彼女のようなピアニストがもっと注目されるべきだ」と仰っていたそうです。
そのライブを見た私も同じ感想を持ちました。ぜひ注目してほしいピアニストです。