AAFC

バレエ名作鑑賞会 第1回

チャイコフスキー くるみ割り人形

2016年12月25日

分科会資料
担当 : 塚田 繁

 

① バレエの歴史

ロマンティック・バレエ
クラシック・バレエ
バレエ・リュスとモダン・バレエ

② くるみ割り人形

「眠れる森の美女」の成功後、ペテルブルグ・マリインスキー劇場の支配人フセヴォロジスキーが、台本振付をマリウス・プティパ、音楽をチャイコフスキーに依頼して1892年12月にロシア帝室バレエ団により初演されました。
振付はプティパが病気になったため、助手のレフ・イワノフが担当しました。
初演は音楽が絶賛されたのに比べ、振付演出はあまり評判がよくありませんでした。理由は第1幕では子供がたくさん出てきてマイムが続き踊りが少なく、第2幕では物語の筋とは関係のない踊りがこれでもかと繰り広げられたからと言われています。
原作はドイツロマン主義作家E.T.A.ホフマンの「くるみ割りと鼠の王様」。

③ チャイコフスキーの音楽

・チャイコフスキーは、本格的なバレエ音楽を書いた最初の大作曲家です。自ら「靴職人」と称し、注文通りの楽曲をきちんと仕上げるプロ根性を持っていました。

・「チャイコフスキーは聴衆に好まれる音楽を書く、人を楽しませる、ということを恐れなかった」(バランシン)

・くるみ割り人形では、「チェレスタ」を初めて使い、子供のコーラスを挿入。

・バレエ上演に先立つ2月にいくつかのナンバーを抜粋して「組曲」を発表しましたが、今日に至るまで大変人気のある曲です。

④ いろいろな振付

1934年(キーロフバレエ)ワイノーネン版:お菓子の国の出来事は夢、クララは大人のパレリーナが演じる。
1954年(ニューヨーク・シティ・バレエ)バランシン版:アメリカで定着
1966年(ボリショイバレエ)グリゴローヴィチ版:第1幕のマイムを踊りに。
1967年(スェーデン王立バレエ)ヌレエフ版
1971年(パンブルクバレエ)ノイマイヤー版
1984年(英国ロイヤルバレエ)ライト版
他にバリシニコフ版、プティ版、シャウフス版、ベジャール版、熊川版など。

⑤ ロイヤルバレエ版

イギリスの振付家ピーター・ライトが1984年に発表したヴァージョン。原作の筋の流れを、ドロッセルマイヤーをいわば主人公にして、より説得力を持って描くという特徴があり、それでいてバレエのだいご味も十分楽しめるものと言われています。

⑥ 上演詳細

舞台は19世紀初めのドイツ・ニュルンベルク。
機械仕掛けの時計や人形を作っているドロッセルマイヤーは、宮廷の注文でネズミの半数を殺してしまうネズミ捕りを発明しました。その復讐としてネズミの女王は彼の甥を醜いくるみ割り人形に変えてしまったのです。
その呪いを解くためには、くるみ割り人形が勇敢に戦ってネズミの王を倒すことと、さらに一人の少女が醜いくるみ割り人形に愛情を抱くことが必要でした。
シュタールバウム家のクリスマスパーティーに招かれたドロッセルマイヤーは、これこそ待っていたチャンスだと考えました。彼はシュタールバウム家の娘クララの名付け親だったのです。
クララは14歳になったばかり、くるみ割り人形にされた甥は15歳になっていました。
クリスマスはジンジャープレッドを盗み食いにくるネズミたちとくるみ割り人形が戦うための絶好の機会と考えました。

第1幕
第1場 ドロッセルマイヤーの仕事場

ネズミの女王によりくるみ割り人形に変えられた甥の写真が掲げられています。ドロッセルマイヤーは密かに、人形をいつくしむ少女の愛の力で甥の本来の姿を取り戻そうと考え、クララの御守りに天使の人形を贈ることにします。
ドロッセルマイヤー(ガリー・エイビス)

第2場 シュタールバウム家の外

アシスタントが天使の人形を届けにきます。

第3場 シュタールバウム家の居間

子供も大人も賑やかにクリスマスを祝っています。ドロッセルマイヤーから届いた天使は大きなクリスマスツリーのてっぺんに飾られます。
ドロッセルマイヤーが到着して子供たちのために様々な人形を出して見せ、アルルカンやコロンビーヌが踊ります。彼はクララにくるみ割り人形をプレゼントし、クララはそれがとても気に入りました。
楽しいパーティーもお開きになり、子供たちは寝室に行かされます。
静かになった部屋はドロッセルマイヤーの魔法の世界になり、彼は時間を止めてくるみ割り人形を抱いたクララをそこへ導きます。それは彼の想像の世界かもしれません
クララ(イオーナ・ルーツ)、アルルカン(ブライアン・マロニー)、コロンビーヌ(ベサニー・キーティング)、兵士(蔵健太)、ヴィヴァンディエール(ヘレン・クロウフォード)

第4場 ネズミとの戦い

ネズミの大軍とくるみ割り人形に率いられた鉛の兵隊が戦います。
ネズミの王との対決でくるみ割り人形はあわや殺されそうになりますが、クララの一撃が彼を救います。倒れていたくるみ割り人形は素敵な青年に変わっていました。
ドロッセルマイヤーは、クララと甥を魔法の旅に送り出します。
くるみ割り人形/ハンス-ペーター(リカルド・セルヴェーラ)、ネズミの王(デービッド・ピカリング)

第5場 雪の国

クララたちは雪の精が踊る雪の国を旅します。
情景 冬の松林、雪片のワルツ(少年合唱付き)

第2幕
第1場 お菓子の国への旅

天使の人形たちに導かれて旅は続きます。

第2場 宮殿の砂糖庭園

クララたちは金平糖の精と美しい王子に迎えられます。若いカップルを歓迎して様々な趣向を凝らした踊りが繰り広げられます。
金平糖の精(吉田都)、王子(スティ―ヴン・マクレイ)
ディヴェルティスマン

スペインの踊り  (キリステン・マクナリー、ジョナサン・ハウウェル、シアン・マーフィ、エリコ・モンテス、シンディ・ジョーダン、トーマス・ホワイトヘッド)

アラビアの踊り (ローラ・マカロー、平野亮一、フェルナンド・モンターノ、ヨハネス・ステパネク)

中国の踊り (ライアム・スカーレット、アンドレイ・ウスペンスキ、ジョナサン・ワトキンス、ジェームス・ウィルキー)

ロシアの踊り(トレパーク) (ポール・ケイ、マイケル・ストイコ)

葦笛の踊り (エリザベス・ハロッド、ベサニー・キーティング、エマ・マグアイア、高田茜)

花のワルツ ばらの精(ローラ・モレラ)、エスコート(蔵健太、アーンスト・メイスナー、セルゲイ・ポリューニン、ブライアン・マロニー)

花の踊り (崔由姫、ヘレン・クロフォード、小林ひかる、サマンサ・レイン)

グラン・パ・ド・ドゥ (吉田都、スティ―ヴン・マクレイ)

フィナーレ

第3場 シュタールバウム家の外

ドロッセルマイヤーは、クララを静かに寝かせます。目覚めたクララのところにハンス=ペーターがおじさんの家がどこかを訪ねます。どこかで会ったことがあるような、と振り返る二人。

第4場 ドロッセルマイヤーの仕事場

うたた寝から起きたドロッセルマイヤー。そこへ家を探してきた甥が入ってきました。呪いが解けて喜ぶ二人でした        (ピーター・ライトの解説より)

振付:ピーター・ライト(元振付イワノフ)
上演:2009年12月ロンドン・ロイヤルオペラハウス
演奏:ロイヤルオペラハウス管弦楽団 指揮:コーエン・ケッセルズ

参考
ロイヤルバレエのダンサー(2016-7シーズン)

プリンシパル:F.Bonelli, A.Campbell, L.Cuthbertson, M.Golding, F.Hayward, 平野亮一, N.Kish, S.Lamb, S.McRae, L.Morera, V.Muntagirov, M.Nunez, N.Osipova, T.Soares, 高田茜, E.Watson, Z.Yanowsky
(Guest) A.Ferri, M.Galeazzi, R.Marquez, I.Salenko

ファースト・ソリスト:13名(含む崔由姫,小林ひかる)

ソリスト:19名

ファースト・アーティスト:17名

アーティスト:19名

バレエ名作一覧

初演年 題名 音楽 振付
1832 ラ・シルフィード シュナイツホーファー タリオーニ
1841 ジゼル アダン コラリ、ペロー、プティパ
1844 エスメラルダ プー二 ペロー
1863 海賊 アダン、プーニ プティパ
1869 ドン・キホーテ ミンクス プティパ
1870 コッペリア ドリーブ サン=レノン
1876 シルビア ドリーブ メラント
1877 ラ・バヤデール ミンスク プティパ
1877 白鳥の湖 チャイコフスキー ライジンガ-
1890 眠れる森の美女 チャイコフスキー プティパ
1892 くるみ割り人形 チャイコフスキー イワノフ
1898 ライモンダ グラズノフ プティパ
1910 火の鳥 ストラヴィンスキー フォーキン
1911 ペトルーシカ ストラヴィンスキー フォーキン
1913 春の祭典 ストラヴィンスキー ニジンスキー
1917 パラード サティ マシーン
1919 三角帽子 ファリャ マシーン
1923 結婚 ストラヴィンスキー ニジンスカ
1924 牝鹿 プーランク ニジンスカ
1928 アポロ ストラヴィンスキー バランシン
1929 放蕩息子 プロコフィエフ バランシン
1930 黄金時代 ショスタコーヴィチ ワイノーネン他
1940 ロメオとジュリエット プロコフィエフ ラヴロフスキー
1944 アパラチアの春 コープランド グレアム
1944 ファンシー・フリー バーンスタイン ロビンズ
1945 シンデレラ プロコフィエフ ザハロフ
1954 石の花 プロコフィエフ ラブロフスキー
1956 スパルタクス ハチャトゥリアン ヤコプソン
1957 パゴダの王子 ブリテン クランコ
1957 アゴン ストラヴィンスキー バランシン
1986 ザ・カブキ 黛敏郎 ベジャール

以上