1 本日のプログラム
バレエ「ロメオとジュリエット」 音楽プロコフィエフ、振付マクミラン
英国ロイヤルバレエ 2012年3月ロイヤルオペラハウス収録のBDを使用
2 プロコフィエフ
1891年ウクライナで生まれる。父は大規模農場の管理者、母よりピアノを習い、早くから作曲の才能を示した。13歳でペテルブルグ音楽院入学、作曲とピアノを学んだ。
1910年モスクワデビュー、
1913年ヨーロッパ旅行、翌年ディアギレフに紹介され、バレエの依頼を受けた。
1918年シベリアと日本を経由してアメリカに渡り演奏活動。
1920年欧州に戻る。ピアノ曲、オペラを中心に作曲活動は順調。
1920年代後半以降新生ソ連をしばしば訪問するが、プロコフィエフの前衛的な音楽への評価はまちまちであった。一方プロコフィエフの音楽も抒情的な旋律溢れる古典的性格を帯びるようになった。ロシアへのこだわりを持ち続ける。
1933年モスクワに移る。創作活動は紆余曲折があったものの、何とか順調。
1948年ジダーノフ批判。ショスタコーヴィチと共にプロコフィエフも「形式主義」として批判を浴びる。健康状態悪化。
1953年スターリンと同じ日に死去。
バレエ曲「ロメオとジュリエット」はモスクワに移った1934年頃より書かれた。従来の実験主義的モダニズムの作風に飽き足らず、より単純で表現的な手法による作曲を目指し、たまたま接したシェイクスピアの物語の人道的側面に共感し、振付師ラヴロフスキーと文学者ラドロフの協力でバレエ台本化、1935年に完成した。
プロコフィエフの他のバレエ曲
「道化師」(1920)、「シンデレラ」(1944)、「石の花」(1950)
3 初演
当初レニングラードで上演される予定であったが、ラドロフの辞任から実現せず、次で計画されたモスクワでも、当時の芸術界をめぐる情勢などから延期となっていた。結局初演はチェコのブルノ国立劇場で1938年末に行われた。この成功を受けて1940年、レニングラードのキーロフ劇場でロシア初演がラヴロフスキーの振付で行われ、大成功を収めた。
4 さまざまな振付
1955年 アシュトン(デンマーク王立バレエ)
1958年 クランコ(ミラノスカラ座バレエ)
1965年 マクミラン(ロイヤルバレエ) 本公演
1977年 ヌレエフ(ロンドン・フェスティバル・バレエ)
1978年 グリゴローヴィチ(パリ・オペラ座バレエ)
(1957年「ウェスト・サイド物語」音楽:バーンスタイン、振付:ロビンズ)
5 マクミラン版
写実的なラヴロフスキーの演出の影響を受け、人物の感情をより前面に出した演出と言われている。それまでのバレエでは表現されることが少なかった苦悩、怒り、憎しみといった負の感情、死についても美化されることも隠されることもなく描かれている。中心はジュリエットで、お嬢さんから、情熱に駆られて疾走するヒロインへと劇的に変化させている。「幅広くあまりに複雑な感情に溢れるからか、普段も心穏やかではいられなくなる役。つらく逃げ出したいと思うと同時にどっぷりとつかりたいとも思う。興味深く不思議な魔力のある作品だと感じます」(小野絢子=新国立劇場公演の主役)
6 登場人物 ()内は今回上演の配役
ジュリエット:キャプレット家の娘(ローレン・カスバートソン)
ロメオ:モンタギュー家の息子(フェデリコ・ボネリ)
マーキュシオ:ロメオの友人(アレキサンダー・キャンベル)
ティボルト:キャプレット夫人の甥(ベネット・ガーツサイド)
ベンヴォリオ:モンタギューの甥、ロメオの友人(ダウィド・ツエンジミーチ)
パリス:ジュリエットへの求婚者(ヴァレリ・フリストフ)
キャプレット卿:ヴェローナの教皇派有力貴族(クリストファー・サンダース)
キャプレット夫人:同夫人(クリスチーナ・アレスチス)
バリー・ワーズワース指揮ロイヤルオペラハウス管弦楽団
7 バレエの内容
場所 イタリア、ヴェローナ
① 前奏曲(マル数字はプロコフィエフの音楽の通し番号)
第1幕
第1場 市場
モンタギュー家のロメオは、ロサリンに言い寄ろうとするがうまくいかない。友人マーキュシオとベンヴォーリオがなぐさめる。夜が明けると人々が市場にやってくる。ティボルトとロメオ及び彼の友人の間で喧嘩が始まりキャプレット家とモンタギュー家の者が加わる。それぞれの領主も加わるが、そこへヴェローナ大公が現れ、両家に争いを止めるように命じる。
② ロメオ
③ 街の目覚め
④ 朝の踊り
⑤ 喧嘩
⑥ 決闘
⑦ 大公の宣言
⑧ 間奏曲
第2場 キャプレット家のジュリエットの部屋
ジュリエットは乳母と戯れていたが、そこへキャプレット卿と夫人が入ってくる。そして、ジュリエットに求婚している富裕な若い紳士のパリスを連れてくる。
⑨ 舞踏会の準備
⑩ 少女ジュリエット
第3場 キャプレット家の外 (省略予定)
キャプレット家の舞踏会のため客がやってくる。ロメオ、マーキュシオ、ベンヴォリオは仮面をつけ、ロサリンを追って中に入る。
⑪ 客人達の登場
⑫ 仮面
第4場 大広間
ロメオと友人達が入ってくると宴たけなわ。客人たちはジュリエットの踊りを見ている。マーキュシオは、ロメオが彼女に魅せられているに気づき、滑稽な踊りで人々の注意をロメオから逸らす。ティボルトはロメオを見つけ、出ていくように命ずるが、キャプレット卿はゲストとして迎える。
⑬ 騎士たちの踊り
⑭ ジュリエットのヴァリアシオン
⑮ マーキュシオ
⑯ マドリガル
⑰ ティボルトはロメオを見つける
⑱ ガヴォット 客人達の退場
第5場 キャプレット家の外
客人達が退去する中、キャプレット卿は、ロメオを追うティバルトを抑える。
第6場 ジュリエットのバルコニー
眠れないジュリエットはバルコニーに出てロメオを想っていたところ、庭にロメオが現れる。彼らは互いの愛を告白する。
⑲ バルコニーの情景
⑳ ロメオのヴァリアシオン
㉑ 愛の踊り
第2幕
第1場 市場 (省略予定)
ロメオはジュリエットのことが頭から離れない。結婚式の一団を見ると、いつか彼女と結婚することを夢見る。ジュリエットの乳母が人混みをかき分けてロメオを探し彼にジュリエットからの手紙を渡す。ロメオは彼女が結婚に同意したことを知る。
㉒ フォーク・ダンス
㉓ ロメオとマーキュシオ
㉔ 五組の踊り
㉕ マンドリンを手にした踊り
㉖ 乳母
㉗ 乳母はロメオにジュリエットからの手紙を渡す
第2場 教会のチャペル
恋人たちはロレンス修道僧により秘密に結婚する。ロレンスはこの結婚により両家の争いに終止符が打たれるのではないかと期待した。
㉘ ローレンス僧庵でのロメオ
㉙ ローレンス僧庵でのジュリエット
第3場 市場
祭りのさなか、ティボルトはマーキュシオと闘い、彼を殺す。友の死を見てロメオは復讐し、ティボルトを殺す。彼は追放となった。
㉚ 民衆のお祭り騒ぎ
㉛ 一段と民衆の祭り気分は盛り上がる
㉜ ティボルトとマーキュシオの出合い
㉝ ティボルトとマーキュシオの決闘
㉞ マーキュシオの死
㉟ ロメオはマーキュシオの死の報復を誓う
㊱ 第2幕の終曲
第3幕
㊲ 前奏曲
第1場 寝室
夜が明けロメオは去らねばならない。彼がジュリエットを抱きしめ出ていくと、両親がパリスと入ってくる。ジュリエットは拒絶し、パリスは出ていく。両親は怒り勘当すると脅す。ジュリエットは修道士ローレンスのもとに走る。
㊳ ロメオとジュリエット
㊴ ロメオとジュリエットの別れ
㊵ 乳母
㊶ ジュリエットはパリスとの結婚を拒絶する
㊷ ジュリエットひとり
㊸ 間奏曲
第2場 教会のチャペル
ジュリエットはロレンスに助けを求める。彼は一時的に仮死状態にする薬品の小瓶を与え、両親はジュリエットが死んだと思い、納骨堂に埋めるだろう、ロメオは彼からの通報で夜に戻り、彼女をヴェローナから連れていくだろう、と伝える。
㊹ ローレンス僧庵
㊺ 間奏曲
第3場 寝室
その夜ジュリエットはパリスと結婚することに同意、しかし翌朝、両親とパリスは彼女がベッドで死んだ状態となっていることを発見。
㊻ ジュリエットの寝室
㊼ ジュリエットひとり
㊽ 朝の歌
㊾ 百合の花を手にした娘たちの踊り
㊿ ジュリエットのベッドのそば
第4場 キャプレット家の墓
ロメオは、修道士の通報は受け取らなかったが、ジュリエットが死んだとの知らせを聞いてヴェローナに戻る。彼は僧に変装して納骨堂に入り、パリスがいるのを見つけ殺す。ジュリエットが死んでいると思い、ロメオは毒薬を飲む。目覚めたジュリエットはロメオが死んでいるのを見つけ、自分もロメオの短剣で死ぬ。
○51 ジュリエットの葬式
○52 ジュリエットの死 (マクミランの解説による)
主なCD:全曲 マゼール指揮クリーブランド管弦楽団(Dec)
抜粋 アバド指揮ベルリンフィル(DG) ムーティ指揮フィラデルフィア管
参考YouTube:Romeo and Juliet Alessandra Ferri, Balcony Scene,
Romeo and Juliet ACT1(vanillatte55)(吉田都による実技指導)