AAFC

20世紀の音楽 第4回
特異な政治体制のもとを不屈の闘志で生き抜いた天才
ショスタコーヴィッチ その2 交響曲

2017年10月8日

分科会資料
担当 : 山本 一成

 

 初の共産主義体制下たびたびの迫害と抑圧から屈すること無く、膨大な数、様々なジャンルの曲を発表しておりますが、その中の代表的なのは交響曲であり、15曲もの交響曲を作曲。

 単に聴き流すだけで無く、各時代背景をを知り聴き直す事で理解が進みます。彼の創作上の苦悩が端的に示されたジャンルと言われています。

 その交響曲を政治体制を考慮して分類すると以下の様に分類できます。

*初期の主に革命をテーマとした曲 : 交響曲2番(十月革命)交響曲3番(メーデー)

*ヨーロッパの絶対的交響曲の伝統と本格的に対決した記念碑的作品 : 交響曲4番

*判りやすい人気曲 (革命) ベートーヴェン風 : 交響曲5番

*筋金入りの反体制作曲家 戦争交響曲3部作 
         : 交響曲7番(レニングラード)、交響曲8番、交響曲9番

*「第10論争」も「楽観的悲劇」という社会主義リアリズムの拡大解釈で統一:交響曲10番

*「死者の歌」ともよばれる。死の危険と言う物を常に身近に感じていた : 交響曲14番

*第2次世界大戦が始まった年に作曲。その暗く不安な時代情勢を反映 : 交響曲 6番

*1905年「血の日曜日事件」標題音楽 :  交響曲11番

*1917年のレーニンの10月革命を描いた : 交響曲12番

*「バビ・ヤール」の通称で知られ、ナチスドイツがユダヤ人を虐殺した史実に基づく詩に作曲。反ユダヤ主義に無関心なソ連当局を批判 : 交響曲13番

*自身の人生を回顧した様な最後の作品 : 交響曲15番

〈モストリークラシック及び千葉潤著「ショスタコーヴィッチ」を参考に分類)

 

***************************************
モストリークラシック 中村孝義氏の記事より
「彼が残した作品の内、とりわけ交響曲は、体制に対する恭順や意思表示を示す公的な顔としての役割を担っていた。ソヴィエト連邦随一の作曲家として、西側にも広く知れ渡ってたショスターコーヴィッチが、ソ連市民や国外の多くの人々に対して大きな影響力をもつ、謂わば重要なプロパガンダとしての意味をもつ交響曲の分野で、どの様な作品を発表するかは、国家の体制を誇示したり宣伝したりする上で重要な意味を持つため、常に大きな注目、いや、監視の対象なのであった。」

 

<私のショスタコーヴィッチのイメージ>

<演奏曲目>
1.交響曲2番(1927)<10月革命に捧ぐ>
     ※前半は真の意味での前衛音楽
  交響曲3番(1929)<メーデー>
     ※実験の度が過ぎ、前半と後半との折り合いが悪く評価が難しい。
                                   抜粋約10:00

ルドルフ・バルシャイ指揮 WDRシンフォニーオーケストラ 1994年、1995年録音   WDR

2.交響曲4番(1936) 第3楽章             25:58
     ※マーラーからの強い影響。

キリル・コンドラシン指揮 モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団 1962年録音  メロディア


3.交響曲5番(1937) 第4楽章             11:14
     ※判りやすい人気曲、各楽章の内容の充実度は高く評価される。

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮 レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団 1973年録音  Altus                                

4.交響曲6番(1939) 第3楽章             7:09
     ※幻想的で、軽さの中にも不安を隠しているような雰囲気。

ヴァシリー・ペトレンコ指揮  ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック管弦楽団 2010年録音  NAXOS                            

5.交響曲7番(1941)<レニングラード>第3楽章  16:22
     ※ナチズムに対する勝利を描いたとされる。

マリス・ヤンソンス指揮 サンクトペテルブルグ・フィルハーモニック 2001年録音   EMI 

6.交響曲8番(1943) 第3楽章              6:28
     ※戦争の残虐さなどを表した重い曲。

ルドルフ・バルシャイ指揮 WDRシンフォニーオーケストラ 1994年、1995年録音 WDR 

7.交響曲9番(1945)  全楽章 
     ※先勝に湧く体制側の期待を裏切った曲。

ルドルフ・バルシャイ指揮 WDRシンフォニーオーケストラ 1994年、1995年録音 WDR

8.交響曲10番(1953)  第3楽章           11:36 
     ※戦時中にスケッチを始め、スターリンの死後に発表、初演直後から西側では高い評価。

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1981録音 グラモフォン

9.交響曲11番(1905)  第4楽章           14:17
     ※ロシアの歴史的な事件をを描写した、一種の標題音楽。

ルドルフ・バルシャイ指揮 WDRシンフォニーオーケストラ 1994年、1995年録音 BDR  

10.交響曲12番(1961)  第4楽章          10:08
     ※若い時期から温め続けた、レーニンをテーマにした曲。

ルドルフ・バルシャイ指揮 WDRシンフォニーオーケストラ 1994年、1995年録音 WDR 

11.交響曲15番(1971)  第2楽章          11:43 
     ※自作や他作からの引用に意味を込める苦悩の創作人生を高い視点から振り返る作品。

ルドルフ・バルシャイ指揮 WDRシンフォニーオーケストラ 1994年、1995年録音 WDR

※印はモストリークラシック(産経新聞社)からの引用。

以上     

目次へ戻る