AAFC

20世紀の音楽 第6回

特異な政治体制のもとを不屈の闘志で生き抜いた天才。
ショスタコーヴィッチその4

2018年4月8日

分科会資料
担当 : 山本 一成

 

ショスタコーヴィチの時代、交響曲こそが体制に対する恭順や意思表示を示す、謂わば公的な顔としての役割を担っていたのは間違いない。
それに対し体制からの批判が届きにくかった弦楽四重奏曲こそが特に、彼の真実の内面の疼きを告発する絶好の手段となったと言われています。他にも協奏曲、室内楽曲なども同様な事が言えるのではないかと思います。
20 世紀音楽シリーズの「ショスタコーヴィチ編」の最終回は協奏曲・弦楽四重奏曲他を採り上げます。

<演奏曲目>
1、弦楽四重奏8番(1960夏)    第1楽章 4:59
                    第2楽章 2:35
                    第3楽章 4:10
                    第4楽章 5:24
        フィッツウィリアム弦楽四重奏団   ロンドン 455-776-2

*過去の作品の引用やDSCH の音名象徴で自身がファシズムの犠牲者であることを示唆していると言われている。「ファシズムと戦争の被害者の思い出に」と公的な顔を持つ作品と考えられてきた。娘ガリーナに「私はこの曲を自分自身に捧げた」と語っている。

2、弦楽四重奏15番(1974)     第1楽章 11:45
                     第2楽章 5:26
                     第3楽章 1:29
                     第4楽章 4:39
                     第5楽章 4:44
                     第6楽章 6:41
        フィッツウィリアム弦楽四重奏団ロンドン455-776-2

*全楽章アダージョで書かれている。その全てに師の影が色濃く漂っている。
聴いていて、不気味で計り知れない悲しみと恐怖感にやりきれない感情を感じずにいられ
ない。

メンバー・チェンジを経て現在も活躍するイギリスのカルテット、フィッツウィリアム弦楽四重奏団が
最初の演奏会をおこなったのは彼らがまだ学生だった1968年、ケンブリッジでのことでした。フィッツ
ウィリアム弦楽四重奏団の名前が一躍有名になったのは、作曲者本人からも賞賛されたショスタコー
ヴィチの弦楽四重奏曲の連続演奏によってで、演奏会の成功を受け、デッカによりセッション・レコーデ
ィングされた弦楽四重奏曲全集は、現在も同曲集最高の演奏のひとつとして高く評価されています。
その後、彼らはデッカに、シベリウス、ディリアス、ボロディン、ベートーヴェン、フランク、シューベルト、
ブラームスなどの作品をレコーディングし、それらは日本でも話題になっていただけに、今回のオースト
ラリア・エロクエンスからのリリースは大いに歓迎されるところです。(HMV)

3、ピアノ協奏曲1番(1933)     第3楽章 1:28
                     第4楽章 6:49
        マルタ・アルゲリッチ(P) セルゲイ・ナカリャコフ(trumpet)
        指揮 アレクサンダー・ベルデルニコフ・イタリア語管弦楽団
        ワーナークラシックス5 04504 2

*作曲者本人の演奏で行われる。ショパンピノコンクールに出場するも優勝できず、演奏者と作曲者の両立に悩む。アレクサンドルシュミット(トランペット奏者)。全編はシニカルな様相を呈する。自作や他の作曲家の引用が多様。トランペットは皮肉ぽっさ、ピアノはウイットやユーモアを醸し出す。(モストリー・クラシックスより抜粋)

4、ピアノ協奏曲2番(1957)     第1楽章 7:02
                    第2楽章 6:09
                    第3楽章 5:21
         PRAGA DSD350 059
         レナード・バーンスタイン ピアノ&指揮
         ニューヨーク・フィルハーモニック・オーケストラ

*息子のマキシムに献呈。古典的な3楽章構成でロシア的な性格を備えた主題、哀愁、瞑想、風刺、静謐、陽気力動などの様々な感情が込められている。

5、ヴァイオリン協奏曲1番(1955)    第2楽章 6:10
                       第3楽章 12:19
                       第4楽章 4:38
         ダヴィッド・オイストラフ(Vi) 指揮 エフゲニー・ムラヴィンスキー
         レニングラード・フィルハーモニック
         PRAGA DSD350 059

1947~1948に作曲されたがしばらくは発表を控えていた。上記の演奏者で初演。
重苦しい時代の空気を反映された曲。今や人気曲?になった。

6、ヴァイオリン協奏曲2番(1967)     第2楽章 9:33
                        第3楽章 8:23
         ギドン・クレメール(Vn)  指揮 小澤征爾 ボストン・シンフォニー・オーケストラ
         デッカ475 260-2

オイストラッフ60歳の誕生日記念のために作曲したのだが、オイストラッフ59歳であった。
オイストラッフとショスタコヴィッチのこの曲に関する電話でのやり取りが盗聴された話は有
名である。ショスタコヴィッチその2でご覧頂いたドキュメンタリーで生々しく実際のやり取りを
見ていただいた。巨大カデンツァが挿入。

7、チェロ協奏曲1番(1959)     第1楽章6:22
         ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(Cello) 指揮 ユージン・オーマンディ
         フィラデルフィア・オーケストラ
         PRAGA DSD350 059

初演者ロストロヴィチの人間離れした技巧と歌心、美しい音などが存分に考慮、人を食った
笑いが随所に顔をのぞかせる。(モストリークラッシックより抜粋)

8、チェロ協奏曲2番(1966)     第2楽章 4:06
         ハイリッヒ・シフ(Cello) 指揮 マキシム・ショスタコーヴィチ
         バイエルン・ルンドフンク・シンフォニー・オーケストラ
         デッカ 475 260-2

不思議な響きに満ち、暗く、苦く瞑想的、響きは無調風だが、今やチェリストの大切なレパー
トリーになっている。(モストリークラシックより抜粋)

以上   

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