AAFC

オペラ鑑賞会 第12回

ワーグナー ニーベルンクの指輪
第6回(全6回)

2019年2月24日

分科会資料
担当:塚田 繁
   清水 俊一

 

序夜 『ラインの黄金』(Das Rheingold)全1幕:2時間40分
第1日 『ワルキューレ』(Die Walküre)全3幕:3時間50分
第2日 『ジークフリート』(Siegfried)全3幕:4時間
3 『神々の黄昏』(Götterdämmerung)プロローグ、全3幕:4時間30

昨年2月から始めた「ニーベルンクの指輪」、漸くフィナーレを迎えることが出来ました。
神々の長、ヴォータンが「ラインの黄金」で犯した咎が切掛で永遠の神々の世界がついに崩壊してしまうという物語には現代の我々にも通じる様々な教訓が含まれているように思えます。ワーグナーも彼が生きた時代に目にした王侯貴族から新興ブルジュワジー、労働者等の階級社会・世相をシニカルに捉え作品に反映させたのでしょう。そして、崩壊後の救済を女性の献身的な愛(ブリュンヒルデの自己犠牲)に求めたのです。
この長大で荒唐無稽な物語に最後まで付き合って頂いた皆様に改めて敬意を表し、御礼申し上げます。

あらすじ
2

 第1場 前奏曲。ギービヒ家の庭。ハーゲンが柱にもたれ眠って夢を見ている。その夢の中で父アルベリヒが登場、神々は没落してゆく状態になったが、ジークフリートを倒して指環を取り返し、決してそれをラインの乙女たちに返してはならないと告げる。アルベリヒはそのため豪胆なハーゲンを産ませたのだという。

 第2場 夜は次第に明けて朝になる。そこへジークフリートが引き上げてきて、ハーゲンとグートルーネに手柄話を聞かせる。グンターとブリュンヒルデは、遠くから舟にのってやってくる。

 第3場 ハーゲンが岩の上に立ち、角笛を吹いて戦闘準備を告げ、家臣どもを急いで集めている。何ごとかと集まった家臣たちは、グンターの結婚式が催されることを知り、グンターとブリュンヒルデが到着するのを待ちかねて万歳をとなえる。

 第4場 グンターは青ざめてうなだれているブリュンヒルデを伴って上陸し、家臣たちに迎えられる。そして、ここで自分たちのと、グートルーネとジークフリートとの二組の結婚式があげられることを告げる。
これを聞いてブリュンヒルデが驚いて振り向くと、そこにジークフリートがいるので茫然としてしまう。このブリュンヒルデの様子にグンター他の人々はいぶかる。ブリュンヒルデは、なにも感じていないジークフリートの手に指環を見つけ、グンターに奪われたと思っていた指環がジークフリートの指にあるといって次第に怒りがこみ上げてくる。
そして神々にその復讐を誓う。ブリュンヒルデは、ジークフリートが自分の夫であり、ふたりで愛を語り合う時には剣も何も役に立たなかったと告げると、家臣たちやグンターも信義の問題だと叫び、ジークフリートは結局潔白を証明する誓いを立てさせられる。そしてハーゲンの差し出す槍に改めてグンターと兄弟の盟約を宣誓し、一同の騒ぎをなだめる。一同はグートルーネを腕にかかえたジークフリートのあとを追って広間にゆく。

 第5場 ブリュンヒルデ、グンター、ハーゲンが残る。ハーゲンは、欺かれたといってブリュンヒルデを慰め、復讐に力をかそうという。しかしジークフリートの豪勇を知っているブリュンヒルデは結局、ジークフリートの致命的な急所を教えてしまう。
ハーゲンは、気の弱いグンターをそそのかし、明日ジークフリートを狩りに誘い出し、後ろから槍で刺してしまおうと計画をたてる。ブリュンヒルデもジークフリートに対する復讐の念に燃えている。
33様の思いの中、結婚を祝う行列が近づき、ジークフリート、グートルーネがかつがれて入ってくる。

 

3

 第1場 前奏曲。ライン河畔の低地。単身で獲物を追ってきたジークフリートに対して、浮き上がってきたラインの乙女たちが、獲物とジークフリートの指環とを交換しようと言い出す。おだてられ指環を乙女たちにあたえようとするが、乙女たちから指環を持っていると呪いにより命を失うと忠告され、運命の女神たちも黄金の綱にその呪いを編みこんだと教えられると、怖いもの知らずのジークフリートはかえって指環をわたすのを拒絶してしまう。
乙女たちは、ある誇り高い女性が今日でも指環を受け、ここに返してくれるだろうと告げ、姿を消してしまう。角笛の呼ぶ声がする。

 第2場 ジークフリートは角笛に応じハーゲンとグンターたちがあらわれ、ここで食事をすることにして宴を開く。ジークフリートはラインの乙女たちの予言を話し、次いで幼いころからの想い出をグンターに語ってきかせる。この間にハーゲンは記憶をよみがえらせる魔薬の入った酒をすすめる。
薬が効き、ミーメに育てられ、殺し、ブリュンヒルデを抱擁したことまで想い出して話すと、グンターはそれをきいて驚いてしまう。この時
2羽のカラスがライン方向に飛んでいき、ハーゲンは、ジークフリートにこのカラスの声も聞き分けるかときくと、ジークフリートがハーゲンに背を向けてカラスを見送る瞬間、ハーゲンは、「このカラスは復讐しろとすすめたのだ」と叫んでジークフリートの背中に槍を突き刺す。
ハーゲンは黄昏が近づくなか復讐成就と悠々と森の中に去る。グンターと家臣に囲まれジークフリートは告別の言葉を述べ息絶える。人々は英雄の死を悲しみ、グンターは家臣と共に遺骸をかつぎ城へもどっていく。あたりはラインからの霧がたちこめ葬列が見えなくなる。(ジークフリートの葬送音楽)

 第3場 月夜のギービヒ家の広間。不安げにジークフリートの帰りを待つグートルーネのもとにハーゲンが家臣とジークフリートの遺骸をもってもどってくる。
グートルーネははじめグンターを責めるが、殺したのはハーゲンだと教えられる。ハーゲンは、偽りの宣誓をしたため彼を殺したと言い放ち、代償として指環を要求する。
グンターはグートルーネが相続すべきと妨げるが、剣を抜いたハーゲンに一撃で倒されてしまう。
ハーゲンはジークフリートの指から指環を取り上げようとするが、死んだジークフリートの手が高々と上がり拒否する。そこへブリュンヒルデがすすみ出て、一同に裏切られた妻である自分が復讐にきたと告げる。
グートルーネは、ブリュンヒルデが災難をもたらした、と叫ぶが、ブリュンヒルデから真相を聞かされ、倒れてしまう。やがて、ブリュンヒルデは、家臣たちに命じてラインの河畔に薪を積ませ、ジークフリートの死骸をその上に運ばせるよう指示し、彼の指から指環を抜き取る。
そしてジークフリートの豪勇と信義と愛情をたたえ、ヴォータンに、自分の欲望から結局こうなったのだと告げる。そしてヴォータンのつかわした
2羽のカラスにこれからどうなるか神々に便りを送ろうと語り、呪わしい指環は焼いて浄めるから、ラインの乙女たちはそれを黄金にして保護しておくようにと話し、燃える火焔は天上のヴァルハラの城にゆき、神々の終末になるだろうといって、指環を自分の指にはめ、家臣の炬火をとって薪に投げつける。
ブリュンヒルデは、愛馬にまたがり、馬とともにジークフリートのいる猛火のなかへと躍り込む。燃えさかる火は、突然に高まったライン河の流れに襲われ、その上を、ラインの乙女たちが泳いでくる。これをみたハーゲンは、流れの中に飛び込み指環を奪い返そうとするが、かえって流れにおされ、二人の乙女に深みに引き込まれる。もう一人の乙女は指環を手中におさめ、喜びつつそれを高くかざす。
ラインの流れが間もなくもとにおさまり、乙女たちは指環をめぐって歓呼しながら泳ぎ回る。一方、火はギービヒ家を焼き尽くし、天上で燃え、最後に焼け落ちる寸前のヴァルハラの城が見えてくる。神々と勇士が城の広間に集まってくるがやがて炎に包まれてしまう。

【出 演】
ジークフリート/ランス・ライアン
グンター/ゲルト・グロホウスキ
アルベリヒ/ヨハネス・マルティン・クレンツレ
ハーゲン/ミハイル・ペトレンコ
ブリュンヒルデ/イレーネ・テオリン
グートルーネ/アンナ・サムイル
ヴァルトラウテ/ヴァルトラウト・マイア
運命の女神(エルダの娘)
第一のノルン/マルガリータ・ネクラソワ
第二のノルン/ヴァルトラウト・マイア
第三のノルン/アンナ・サムイル
ラインの乙女
ウォークリンデ/アガ・ミコライ
フォースヒルデ/アンナ・ラプスコフスカヤ
ウェルグンデ/マリア・ゴルチェフスカヤ

【バレエ】 イーストマン・バレエ・カンパニー
【合 唱】 ミラノ・スカラ座合唱団
【振 付】 シディ・ラルビ・シェルカウイ
【演 出】 ギー・カシアス

ミラノ・スカラ座管弦楽団
ダニエル・バレンボイム(指揮)

以上   

目次へ戻る