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分科会「20世紀の音楽」第13回

2020年1月12日

分科会資料
担当 :山本 一成

 

知られざる現代音楽作曲家達(1)
一度は聴いておきたい曲

 20世紀以降に誕生した作曲家は世界中に数は把握しかねるが、各国的に知名度がある作曲家達だけ集計しても何千人といると思われる。その作曲家たちは、先人作曲家がやりつくしてきた音楽形式、メロディー、リズム等々を模倣せず、寧ろそれらを越えて新しい音楽をチャレンジし続けなければならない事に作曲の苦しさがあると私は思う。
それらの作曲家達の曲が、稀に一躍有名になる曲もあるだろうが、多くはその曲が認知されるのに相当の時間を要するだろう。
そんな20世紀以降に誕生した作曲家の中から、私が関心をもった曲に光を当ててみたい。

1.ルーツィヤ・ガルータ(1902~1977:ラトビア)
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*ピアノ協奏曲(1951)
   レイニス・ザリンシュ(ピアノ), アトヴァルス・ラクスティーガラ(指揮)
   リエパヤ交響楽団         35:58

協奏曲を演奏するなどピアニストとして活躍したが、後に病気により演奏家としてのキャリアを終え、作曲に転じた。
ガルータはソビエト時代のラトビアにとどまり、作曲を続けつつラトビア音楽院で学生を教え続けた。
代表曲 カンタータ「神よ、あなたの大地は燃えている!」 感動的!

2.アーネスト・ジョン・モーラン(1894~1950:イギリス)
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*チェロ協奏曲(1945年)第2、3楽章         19:42
   Raphael Wallfisch(cello)、Vernon Handly(指揮)     
   Úlster Orchestra           CHANDOS   CHAN10168X 

イングランド民謡に大きな影響を受けた最後の作曲家の一人であり、ディーリアスやヴォーン・ウィリアムズ、アイアランドといった叙情的作曲家と同じグループに属する。              
ノーフォークやアイルランドの自然風景の影響がはっきりと見られる。チェロ奏者のピアーズ・コートモアと結婚。これは、チェロ協奏曲やチェロソナタといった傑作の創作に繋がった。

<その他推薦曲>
ヴァイオリン協奏曲(1938年)

3.エーリヒ・ ヴォルフガング・コルンゴルド(1897~1957オーストリア・ハンガリー帝国)                        
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*オペラ「死の都」より「ジュリエッタの唄」(1920年)      5:31
   アンナ・ゾフィー・フォン・オッター(Ms)  グラモフォン UCCG-3484

モラヴィア地方のブリュン(現在はチェコのブルノ)に生まれた。
幼い頃から作曲の才能を示し、モーツァルトと同じ名前と相まって「モーツァルトの再来」と呼ばれる程の神童ぶりであった。
12歳で書いた『ピアノ・ソナタ第1番』はリヒャルト・シュトラウスに戦慄と恐怖を与え、名ピアニスト、シュナーベルは13歳の作品『ピアノ・ソナタ第2番』をヨーロッパ中に紹介し、ベルリン・フィルの大指揮者ニキシュは14歳のコルンゴルトに『劇的序曲』を委嘱する。
幼少時の『シンフォニエッタ』を完成させた15歳の頃には、コルンゴルトは既にプロ作曲家として第一線で活躍。
その後アメリカに亡命、映画音楽作曲として名を博した。

<その他の推薦曲>
ヴァイオリン協奏曲(ハイフェッツが初演)

4.ソフィア・アスガトヴナ・グバイ・ドゥーリナ(1931- ソ連)

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*ヴィオラ協奏曲(1996)             35:17
   ユーリーバシュメット(ヴィオラ) ゲルギエフ指揮 キーロフ歌劇場管弦楽団
   グラモフォンUCCG1099

野原に出ては作曲家になりたいと祈るかたわら、イコンに惹かれるような少女であったという。
ソビエト・ロシアで修学中に、新しい音律を探究したために「いい加減な音楽」との烙印を押されたが、ショスタコーヴィチの支持を得た。
ショスタコーヴィチはグバイドゥーリナの卒業試験で、これからも「誤った道」に取り組みつづけるように激励したという。
大きな特色は、西洋的な時間軸が完全に放棄されていることである。管絃楽曲でも、中央に据えられたバヤンはオーケストラとは全く無関係に蛇腹の押し引きを繰り返し、東洋哲学にも似た超越的な時間感覚を想起させる。1998年に、高松宮殿下記念世界文化賞を受賞している。

<他の推薦曲>
ヴァイオリン協奏曲 ギドン・クレーメルの擁護を得て、ヴァイオリン協奏曲《オッフェルトリウム》がソ連邦の国外で演奏され、これが現在の国際的な名声のきっかけとなった。

5.ジェラルド・ラファエル・フィンジー(1901~1956 イギリスの作曲家・園芸家)

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*エクローグ ピアノと管弦楽の為の(1929)      9:52
   Martin Jones(P)  William Boughton(Cond)  English String Orchestra
   Nimbus NI5665

イングランドの作曲家の特徴を最も色濃く受け継いだ。
オルドボーンでは作曲活動とリンゴの栽培に専念し、絶滅の危機にあるイングランドの多数の品種のリンゴを保存した。
また、約3000点のイギリスの詩や哲学・文学の貴重な書籍を蒐集していたが、それらは現在レディング大学に寄贈されている。イングランドの民謡や、古い時代のイギリスの作曲家(たとえばウィリアム・ボイスやジョン・スタンリー、チャールズ・ウェスレーら)の作品を研究して、出版した。

<他の推薦曲>
クラリネットと弦楽のための協奏曲(1949)
チェロ協奏曲(1955年完成)最後の大作

6.ハミルトン・ハーティ(1879~1941 アイルランド)    
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*アイルランド交響曲(1904) 3楽章&4楽章     17:43
   トムソン指揮アルスター管弦楽団    CHANDOS CHAN8314 

ピアノ伴奏者として音楽活動をスタートしたハーティは、1920年にハレ管弦楽団の指揮者に抜擢され、1933年まで同楽団の指揮者として活躍した。
ハレ管弦楽団で大成功をおさめた彼は、その後オスロ他いくつかのヨーロッパのオーケストラを手がけるようになる。
1935年にナイトに叙せられた。
「アイルランド交響曲」はハーティの作品中もっとも知名度が高く、ハーティならではの民謡風で郷愁を帯びた作風である。

<他の推薦曲>
「ピアノ協奏曲」ラフマニノフを彷彿させる。
「ヴァイオリン協奏曲」 

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