1.本日の曲目
交響曲第26番 「ラメンタチオーネ」 より
交響曲第44番 「悲しみ」 より
交響曲第47番 より
交響曲第48番 「マリア・テレジア」 より
交響曲第49番 「ラ・パッシオーネ」 より
弦楽四重奏曲作品20「太陽」第5番
ピアノソナタ第32番ト短調 Hob44 より
ピアノソナタ第33番ハ短調 Hob20 より
交響曲第96番 「奇蹟」
2.楽長ハイドン
1766年エスターハージ家の楽長ヴェルナーが死去、ハイドンが34歳で楽長に昇進しました。ヴェルナーが担当していた宗教音楽も、劇場のための音楽、企画もやることになり、一層多忙な日々を送ることになりました。
一方このころから、ハイドンの作風に変化があらわれ、短調の多用、深い感情表現などが目立つようになりました。この時期をハイドンの「シュトルムウントドランク(疾風怒濤)」の時代と言われています。
交響曲は、1766年から1770年までに10曲、1771年から1773年までに11曲書かれましたが、このうち短調の作品は6曲あります。
3.シュトルムウントドランク(疾風怒濤)
もともとはドイツ文学における変革運動で、啓蒙主義による理性の優越に対し、個人の主観、特に自由な感情表現を目指したものと言われています。代表作はゲーテの「若いウェルテルの悩み」など。
音楽の分野では、グルックのオペラなど劇音楽から、バッハの息子たちの管弦楽曲がこの傾向を表すものとみなされています。モーツァルトでは17歳の作品交響曲第25番ト短調K183が代表。
ハイドンの場合、シュトルムウントドランクの運動に直接影響されたというより、劇音楽での表現傾向を認識しつつ、作曲家ハイドンの音楽表現の広がりと深まりを増した一環であると捉えられています。
・ モーツァルト交響曲第25番ト短調(1773年)第1楽章より
・ ハイドン交響曲第39番ト短調(1765年)第4楽章より
4.交響曲第26番ニ短調 「ラメンタチオーネ(哀歌)」 (1768年)
第1楽章 アレグロ・アッサイ・コン・スピリト 4:56
交響曲第49番ヘ短調 「ラ・パッシオーネ(受難)」 (1768年)
第4楽章 プレスト 2:48
フランス・ブリュッヘン指揮オーケストラ・オブ・ジ・エイジ・オブ・エンライトンメント (Ph)
第26番は3楽章のみで、復活祭前の受難週に関する音楽を引用、第49番も同じころの作曲で教会で続けて演奏されたのではないかといわれています。
5.クラヴィアソナタ ト短調 Hob.XVI.44 (1771年頃)(第32番)
第1楽章 モデラート 9:54
スヴァトスラフ・リヒテル(ピアノ) (Dec)
2楽章からなるが、変奏曲風の長い抒情的な第1楽章が印象的。
6.交響曲第44番ホ短調 「悲しみ」 (1771年)
第3楽章 アダージョ 6:22
トレヴァー・ピノック指揮イングリッシュ・コンサート (Arch)
この楽章はハイドン自身も気に入っていて、自分の葬儀に演奏してほしいと希望していました。
7.交響曲第48番ハ長調 「マリア・テレジア」 (1769年)
第1楽章 アレグロ 8:09
マックス・ゴバーマン指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団 (Sony)
タイトルは、1773年9月に、オーストリアのマリア・テレジア女帝がエステルハーザへの訪問の際演奏された曲と考えられたことによります。
(最近では、この曲はそれ以前に作曲され、実際の訪問時に演奏されたのは、第50番と言われています)
8.クラヴィアソナタ ハ短調 Hob.XVI.20 (1771年頃) (第33番)
第1楽章 モデラート 7:23
第3楽章 アレグロ 3:21
アンドレアス・シュタイアー(ハンマーフリューゲル) (DHM)
音域が広がり、強弱記号も付けられるようになりました。
9.交響曲第47番ト長調 (1772年)
第3楽章 メヌエット 2:52
クリストファー・ホグウッド指揮アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック (オワゾリール)
第3楽章は逆行メヌエットと呼ばれ、前半につづく後半部分は前半の旋律を逆から演奏するように指示されています。
すなわち、ハイドンのメヌエットは通常次のような構成になっています。(Mはメヌエット、Tはトリオでいずれも8小節からなる)
M前半⇒M前半繰返し⇒M後半⇒M後半繰返し⇒T前半⇒T前半繰返し⇒T後半⇒T後半繰返し⇒(ダカーポ)M前半⇒M後半
通常は、「M後半」や「T後半」は前半と違った旋律が出てきます。この47番では、後半部分は前半部分を逆向きに演奏するように指示されています。
旋律そのものは目立たないものですが、(やや不自然な)強弱記号が付いたりして、逆行に気が付きやすいようにも工夫されています。添付の楽譜をご覧ください。
10.弦楽四重奏曲作品20第5番 ヘ短調 Hob.III.35 (1772年)
第1楽章 アレグロ・モデラート 7:19
第2楽章 メヌエット 5:04
第3楽章 アダージョ 5:16
第4楽章 フィナーレ フーガ・ア・2ソゲッティ 2:47
エマーソン四重奏団 (DG)
作品20の弦楽四重奏曲は6曲からなり、のちアムステルダムで出版された時に太陽の表紙絵が印刷されたことから「太陽四重奏曲」と呼ばれるようになりました。このうち第5番ヘ短調は特に抒情的で美しいといわれています。
11.交響曲第96番 ニ長調 「奇蹟」
1791-92年の第1回ロンドン旅行に際して現地で作曲され初演されました。
「奇蹟」という呼び名の由来は;
ハイドンがオーケストラの前に姿を現わし、みずからの交響曲を指揮しようとしたとき、物見だかい聴衆が有名なハイドンをもっとよく間近に見ようと、平土間の席を離れオーケストラに向かって殺到した。そこで平土間の席があいた。
ちょうどそのとき大きなシャンデリアが落ちてきて粉々に砕け、居合わせた大ぜいの人々を大混乱に陥れた。恐怖の一瞬が過ぎると、前方に集まっていた人々は、自分たちが幸運にも危険を免れることが出来たのをしり、数人の者たちが大声で叫んだ。「奇蹟だ、奇蹟だ!」
第1楽章 アダージョ-アレグロ 7:15
第2楽章 アンダンテ 5:52
第3楽章 メヌエット 5:23
第4楽章 フィナーレ(ヴィヴァーチェ・アッサイ) 3:40
アンタル・ドラティ指揮フィルハルモニア・フンガリカ (Dec)
*メヌエットの中間部(トリオ)にはいかにもハイドンらしい気持ちの良いオーボエソロがあります。どのように吹かれているかいくつかの演奏を比較してみたいと思います。
セル-カラヤン-バーンスタイン-ヨッフムーアーノンクール-ホグウッド-ミンコフスキー
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