古来 クラシック音楽史上 室内楽というジャンルは 華やかな交響曲を含む管弦楽、オペラや合唱曲、ピアノやヴァイオリン音楽などの後塵を拝しつつ、常に目立たぬ存在であり続けた。然し地味であるが故に ”滋味掬(きく)すべし” というべきか、静かに耳を傾けながらその響きの中に外面的虚飾を排して人生や音楽と真摯に対峙しようとする作曲者らと深く関ることが可能な数少ないジャンルでもあった。或は自身の個人的体験かもしれないが、われわれがこの世に生を受けて以来 室内楽を聴くことによって享受できる歓びや感動は 年輪を重ねる程に段々大きくなっていくように思われる。それは室内楽の場合 とくに作曲者個人との”響きによる親密な対話”といった要素が色濃く含まれているからではあるまいか。
現在われわれが日常聴いている近代室内楽、中でも最も重要な形式である弦楽四重奏曲は 古典派時代、ハイドンにより確立され、モーツァルト、ベートーヴェンによって大きく発展した。続くロマン派時代には シューベルト、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームスらにより変貌、内面的ロマンが追求される。やがてこの傾向はフランク、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル、フランス5人組などのフランスやボロディン、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、ヤナーチェック、グリーク、シベリウスら東欧、ロシア、北欧へと拡大、さらにローカル的色彩が反映される(国民主義派)。20世紀に入ると 輪は 一層 広がって シェーンベルグ、ウェーベルン、ベルグ、ストラヴィンスキー、バルトーク、ショスタコーヴィッチ、プロコフィエフ、メシアン、クセナキス、シュニトケ、リゲティ、ジョン・ケイジ、ナンカロウ、クラム、ペルト、イサン・ユン、武満徹、細川俊夫、西村朗ら まさに百花撩乱。経済的理由もさることながら 激しく変化する厳しい現実社会と対決するために室内楽は現代音楽にとってなくてはならない表現手段として見直されるようになった。電子音など諸々の新しい手法も取り入れながら・・・。
そうした一連の室内楽の素晴らしい魅力を味わうべく、作品のみならず演奏団体に関する種々のエピソードなど交えながら、先ずは皆で出来るだけ多くの教材(CD)を聴いてみたい。またシリーズ終了時には、室内楽全般についても一通りご理解頂けるような形で終えることができればと期待しています。
また 本シリーズは、計4ないし5回とし、第1回は総論、第2回以降を各論として それぞれ上記に対応すべく 古典派、ロマン派、19世紀後半の国民主義派、20世紀以降の現代音楽と致したく。(とくに最後の現代音楽には 可能な限り多くの作品に触れてみたい)
第1回講座は 下記 要領で開催致したく、宜しくご参加下さい。
記
1。日時 4月20日(土) 1:30 - 3:30 PM
2。会場 つくし野コミュニティ・ホール (千葉県我孫子市つくし野)
3。講演者名 高橋 敏郎
4。内容 『”室内楽”おもしろ講座 第1回』 総論
・室内楽とは?
・室内楽の種類
・室内楽の起こりとその後の発展史
など
とくに初回でもあり 内容的にも無味乾燥にならぬ様 意図して楽しいものに致したく。
第1回の講座内容に関する資料は 当日配布します。