10月22日 つくし野会場 ウクライナの音楽

ウクライナの音楽                  AAFC 23.10.2022     金古 尚
ロシアのウクライナ侵攻からかなりの月日が経つが、まだ解決の糸口は見つかっていません。世界中の目が注がれる中、戦争は続いています。ここではウクライナの音楽環境を振り返ってその全体像を俯瞰してみようと考えました。ウクライナの音楽全体のほんの一部になりますが、進めてみたいと思います。

ウクライナ国歌   小澤征爾 新日本フィルハーモニー交響楽団 (Phi) 1’10

このところ幾度かウクライナ国歌を聞くようになりました。ここでは長野オリンピックの際、小澤さんが世界の国歌を収録した中から聴いてみようと思います。

(1) チャイコフスキーとウクライナ

チャイコフスキー:交響曲第2番ハ短調 第4楽章   10’08
ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(DGG)
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番ニ長調 第2楽章 アンダンテ・カンタービレ
エンデリオン弦楽四重奏団 (Brilliant) 6’44

チャイコフスキーは妹のアレクサンドラの嫁ぎ先のウクライナで夏を過ごすことが多かったそうです。そんな中でウクライナ民謡に親しんだ彼は音楽の素材に積極的に生かしてきました。交響曲の第2番は小ロシア(ウクライナ)と呼ばれています。第1楽章にもロシア民謡のウクライナ風の変形が見え、フィナーレ第4楽章にはウクライナ民謡「鶴」が主題として使われています。カラヤンのベルリン・フィルの1970年代の演奏から聴いてみたいと思います。もう一つ室内楽から弦楽四重奏曲第1番の第2楽章を聴きます。これは有名なアンダンテ・カンタービレですが、これはウクライナの妹の家に滞在中にロシア職人の歌う民謡を聞いたと言います。演奏はイギリスのエンデリオン弦楽四重奏団で聴きます。

(2) ウクライナの作曲家から

カリンニコフ: 交響曲第1番第2楽章
テオドール・クチャール  ウクライナ国立交響楽団 (NAXOS)7’08

ウクライナの作曲家となると、プロコフィエフなど知られているが、ここではカリンニコフを聴きます。カリンニコフはモスクワとキエフの中間、キエフ総督府下のオリョーリの街で警官の子として生まれました。民俗的な美しい旋律に満ちた作品を書きましたが、34歳という若さで世を去りました。2つの交響曲はどちらも魅力的な作品ですが、ここでは第1番ト短調から第2楽章を聴いてみます。クチャル指揮のウクライナ国立響のナクソス盤。

(3) ウクライナの演奏家たち

スクリャービン: 練習曲 Op.2-1     2’39
練習曲 Op.8-12    2’09
ウラディミール・ホロウィッツ  DG
ベートーヴェン: ヴァイオリン・ソナタ第7番 Op.30-2 第1楽章    7’57
ダヴィッド・オイストラフ  レフ・オボーリン(Phi)バッハ:管弦楽組曲第3番より  アリア
ヘルムート・コッホ  ベルリン室内管弦楽団 Deutsche Schallplatten

ウクライナは演奏家の宝庫と言われています。ざっとあげただけでもエルマン、ミルシテイン、コーガン、スターンといったヴァイオリニスト、ホロウィッツ、リヒテル、ギレリスといったピアニストと大変な顔ぶれになります。ここではホロウィッツのスクリャービンを聴きましょう。これは1986年のモスクワ・ライヴ。美しい演奏です。 ヴァイオリンではオイストラフのベートーヴェン。例えばクロイツェルだと迫力に満ちたEMI盤(mono),じっくり構えたPhilips盤など素晴らしい演奏も多いのですが、ここでは7番の第1楽章を。

最後にバッハのアリアをかけます。ウクライナの演奏家のものではありませんが、ウクライナの平和を祈りつつ終わりにしたいと思います。